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「心のより所」能の本質伝えたい 30日・来月1日 新報ホールで「幽玄への誘い」 能楽師・坂井音雅に聞く


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「能~幽玄への誘い~」(琉球新報社主催、NPO法人白翔會共催)が30日と7月1日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開催される。両日とも午後2時開演。観世流シテ方能楽師で重要無形文化財総合指定保持者の坂井音雅らによる「松風」や、同じく保持者で狂言の野村萬斎らによる「舟渡聟(ふなわたしむこ)」など、多彩な演目を披露する。公演の見どころや、夢幻能を沖縄で披露する意義について坂井に聞いた。
  (聞き手・田吹遥子)
 ―「幽玄への誘い」は2013年に野外で薪をたいて鑑賞する「薪能」、18年に室内でろうそくをともして鑑賞する「ろうそく能」を上演した。今回は、霊が登場する「夢幻能」の「松風」を30日に披露する。
 「沖縄では能を見る機会が少ないので、最初は視覚的に楽しめる演目を用意した。これらの積み重ねで『松風』という演目を通して能の神髄の部分をお伝えできる環境が整ったことに幸せを感じる。今、世界各地で紛争が起こっている。多くの人の心のより所になってきた能の本質をご覧いただきたい」
 「上演する『松風』では、幽霊となった海女の姉妹が潮くみをする場面がある。潮くみは重労働だが、水面に映った月を運ぶと表現した。かつて能は生活に定着しており、苦しいことを楽しませるものだった。そこに深みがあり、人の心を癒やす希望がある」
 ―6月は慰霊月。沖縄で夢幻能を上演する意義は。
 「祖父の代から沖縄と関わりを持っている。これまで支えてくださった方に感謝の念を込めて『松風』という舞台でお返ししたい。戦中戦後を乗り越えられた方たちの心のより所になれたらいい」
 ―1日には、小鼓方大倉流十六世宗家で人間国宝の大倉源次郎らが出演し「乱(みだれ)」を披露する。
 「琉球新報創刊130周年への祝いの思いを込めてめでたい作品を上演する。舞の極地と言われる乱や大倉先生の小鼓を楽しんでほしい」
 ―狂言「舟渡聟」では野村萬斎も出演する。
 「喜怒哀楽を表現する狂言を萬斎さんの出演で共に楽しんでもらえたら」
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 入場料は前売りSS席9千円、S席8千円。(当日千円増し)。問い合わせは実行委員会、電話090(3195)0782。