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能で「戦世ぬあわり」 東京で「沖縄残月記」 和と琉を融合


能で「戦世ぬあわり」 東京で「沖縄残月記」 和と琉を融合 13年ぶりに上演された新作能「沖縄残月記」 =21日、杉並区の座・高円寺1
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 【東京】1人の女性の沖縄戦体験を能楽と琉球芸能の共演で描く新作能「沖縄残月記」(作=多田富雄、節付・演出=清水寛二)が21と23の両日、杉並区の座・高円寺1で公演された。公演は13年ぶり。演者らを含め内容も一部変え、拡幅され、和と琉の文化の融合による舞台が「戦世ぬあわり」を伝えた。
 「沖縄残月記」は、20~23日の日程で開催された「日韓琉 鎮魂のまつり」の演目の一つ。初日の21日と異なり、「慰霊の日」の23日の舞台は、演出などに嘉数道彦が加わり内容を拡張した。琉球芸能が能楽の世界に踏み込む挑戦的舞台となった。
 沖縄残月記の物語は清明祭の月の十五夜に始まる。壺屋の陶工、清俊が子の清隆を伴って訪れた浦添・前田の森で村娘と出会い、森の奥の「カミンチュ舟魂のおんば」の居所に誘われる。おんばの御願で現れた曽祖母の大ばんばカマドの霊は、そこで初めて子と孫に戦争体験を語る。
 舞台は和と琉の芸能の違いを絶妙に調和して、女性の悲哀を顕在化させた。和楽器と琉球古典音楽が相まって、静と動、緩急をつけた演出で見る者の胸に迫った。
 22日に公演された「望恨歌(まんはんが)」は、沖縄残月記と同じく能の作者・多田の新作能で、韓国併合時に日本に強制連行された韓国人と妻の悲劇を描いた。公演期間中は組踊「花売の縁」をはじめ、祝儀舞踊の「松竹梅」や五穀豊穣を願う「稲まづん」などの舞踊も併せて披露され、沖縄の伝統を広く伝えた。 (斎藤学)