高齢の男性が、800キロ先を目指して歩く。着の身着のまま、何の荷物もなく出発した。それだけ聞くと、常識的には捜索願を出すべきだ。しかし、その男性、ハロルドには目的があった。
本作は、余命わずかだという、かつての同僚から手紙が届くところから始まる。ハロルドは返事をつづり、ポストの前で立ち止まる。手紙では伝えきれないと考えたハロルドは北の果てへと歩き始めた。衝動的に始まった旅には「僕が歩き続ける限り生き続けろ」というメッセージがあった。
約束は生きる希望になり得る。「来週は楽しみにしていたイベントがあるから頑張ろう」。そんなささやかなことでもいい。未来に希望を託してこそ、先へ先へと進める。
道中で、ハロルドはさまざまな景色を目にして、たくさんの人と出会う。一歩、知らない道へ踏みしめるだけで新しい世界が広がる感覚は、車社会の沖縄県民にとって懐かしく思えるかもしれない。一風変わった、しかし勇気付けられる異色のロードムービーだ。
(スターシアターズ・玉城愛鈴)
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ハロルド・フライのまさかの旅立ち シネマパレット・きょうから シネマプラザハウス・26日から 歩き続ける限り生きろ
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琉球新報朝刊
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