<金口木舌>宿題は難題


<金口木舌>宿題は難題
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 今年の東京大学の入学式で新入生に宿題が出た。総長の藤井輝夫さんが述べた式辞にある「構造的差別」を知り、解消に向け叡智(えいち)を尽くせ―との難題である

▼藤井さんは「構造的差別」を「特定の属性を持つひとが、等しい機会を得られずに排除され、あるいは人一倍の努力をせざるを得ない状況」と定義する。属性とは性別や身体的特徴、居住地域などを指す。それが障壁となり、権利行使が理不尽に阻まれることがある

▼沖縄大学元学長の新崎盛暉さんは地域の視座から「構造的沖縄差別」を問うた。米軍基地の過度な偏在で生じる危険は耐えがたい。ゆえにこれ以上の基地負担は勘弁してほしい。そんな民意が他県と同じ重みでくみ取られない差別を訴えた

▼相次ぐ米兵による性的暴行事件への抗議について憲法研究者は言う。「沖縄という地域、そして住民に苦悩を背負わせておきながら恥じない。これが日本政府ではないか」

▼東大総長の宿題は「責任の所在は政府にあり」がヒントか。政府が据える「構造的差別」の壁は高く、正当な要求を幾度も阻んできた。どう乗り越えるか。新入生に限らず国民に課された難題である。