<金口木舌>土中の人


<金口木舌>土中の人
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 国家による過ちを償う機関でもあろう。その取り組みは見習いたい。米国の国防総省には遺骨収容の専門機関「捕虜・行方不明者調査局」(DPAA)がある

▼戦地に派遣され、行方が分からない兵士を追跡調査し遺骨も収容する。去る大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争…。外交がいかに厳しくてもこの任務は続き、2018年には北朝鮮から遺骨などが返還された。身元判明の事例もある

▼沖縄では228人の米兵が未収容という。遺骨収集を続ける具志堅隆松さんは、日本の身元特定事業への参加を米国の遺族に求める。「米兵の犠牲者を探すため米国が入ってくれば、韓国、台湾の犠牲者も故郷へ返す動きに発展するかもしれない」という呼びかけに、米国はどうこたえるか

▼名護市辺野古の新基地は大浦湾側の工事が今月20日にも始まろうとしている。沖縄戦の激戦地で米兵の遺骨も混じるかもしれぬ「南部の土砂」を使わないか。具志堅さんは懸念する

▼異郷の地で絶えた命に目をつむるようなことはないと米政府には期待したい。きょうは終戦記念日。米兵も含め戦争が終わったことも知らぬまま、土中に眠る人がいる。