沖縄各地から5万点!古銭や農漁業具など暮らしの品を収集 沖縄市の諸見民芸館が創立50周年展


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 【沖縄】約5万点を収蔵する沖縄市諸見里の諸見民芸館(伊禮吉信館長)の創立50周年記念展が1日開幕した。県下一の私設民芸館として全国的にも注目されてきた膨大な収集品の文化財的価値に改めてスポットが当てられている。来年5月5日まで。

記念展の参観を呼び掛ける伊禮吉信館長=1日、沖縄市の諸見民芸館

 伊禮館長(73)の父憲一さん(故人)が私財を投じて復帰前年の71年10月に建設。総床面積180平方メートルの3階建て民芸館の壁面には陶片や瓦片などが埋め込まれ、その独特の風情は当時まだ閑散としていた地域の中で異彩を放った。

 「父は若い頃から古来の生活史や文化に関心を持ち、生活、生産用具などを今のうちに残さなければ跡形もなく消えてしまうと危機感を抱き、収集に執念を燃やしていた」と述懐する。大阪で働いていた伊禮さんは父に呼び戻され、一緒に離島を含め県内全域を駆けずり回り、88年に館長を引き継いだ。

 収集は文化財級の古陶磁器、琉球王朝時代の扁額や古銭、三線、考古資料、戦争遺品、農漁業生産用具など多岐におよび、その点数は年々増え膨大に。このため90年には総床面積約130平方メートルの2階建ての別館を建てた。その間、750点の焼き物の写真を収録した「琉球の古陶集」を自費出版、ジャンル別の企画展は21回を数える。現在は民俗研究者や専攻学生らの来館が多いという。

 別館での記念展では陶器や民具、美術、文化の専門誌、観光ガイドブック、新聞、写真グラフ誌による紹介、県内の私設民芸館の先駆けとしての足跡を振り返る貴重な資料が展示されている。また伊禮館長の克明な図案の記録帳、企画展ポスターなど150点余を中心に憲一さんの収集人生の原点というマーグ(竹製の着物や下着を入れる行李(こうり))や大木をくり抜いた穀物樽(たる)、16世紀ごろの小型梵鐘の逸品もある。記念展の参観は無料。

 伊禮館長は「父の執念を誇りに思う。いずれもかけがえのない文化遺産、沖縄の宝といえる。その遺志と遺産を特に若い世代に知ってほしい。人々の暮らしや歴史がびっしり詰まった本館もぜひ参観してほしい」と呼び掛けている。

 開館時間は午前10時~午後5時。入館料は大人300円、中高校生200円、小学生100円。問い合わせは(電話)098(932)0028。
 (岸本健通信員)

※注:伊禮吉信さんの「禮」はネヘン