悔し涙の準優勝…写真甲子園、沖縄工業高校の3人が大会で得たもの【受賞作品写真あり】


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 【北海道で嘉数陽】優勝しか狙っていなかった―。写真甲子園2022で準優勝が発表された瞬間、昨年優勝した沖縄工業3年の平良有理佳さん(18)は、悔し涙でぬれる顔を両手で覆いながら表彰台に向かい、壇上で終始肩をふるわせた。首に掛けられたメダルの色を見ることもできなかった。優勝は、真横に座っていた大阪府立生野高校。閉幕が告げられると、チームメートの2人も、せきを切ったように泣いた。

 連日、早朝5時からカメラを手に北海道の町を練り歩いた。撮影チャンスを増やすため、分かれて行動した。「2年間一緒にやってきた。(平良さんが)優勝しか狙わないなら、私たちも優勝だけを狙う」。不安につぶされそうな平良さんを、2年の小林沙樹さん(16)は必死で支えた。椅子から立ち上がれなくなっている平良さんの背中をさすり、手を握って声を掛けた。

 本戦直前にチームへの参加が決まった2年の屋比久樹里さん(16)は、自らの作品で2人を鼓舞した。民家で撮った、穏やかな表情でソファに座る住民の写真。最終的に作品には組み入れなかったが、2人をうならせた。「大会中に確実に腕を上げたよね」。小林さんの言葉に、屋比久さんはにこっとした。

 表彰式終了後、嘉手納高校の3人が声を掛けた。「すごかったよ」。嘉手納の明るい表情に、沖縄工業の3人は落ち着きを取り戻した。2年の小林さん、屋比久さんは来年の雪辱を誓う。平良さんは「写真は人とのつながりを深められると、改めて感じた」と話した。

 沖縄工業の作品について須藤絢乃審査員は「明るく広大な北海道の景色に惑わされることなく、苦労、命があることに気付けている」と評価。立木義浩審査委員長は「暗くて重い人生の深淵(しんえん)を見せつつ、ユーモアも隠れた写真」と評価した。

(嘉数陽)