アジサイ育て40年 98歳・饒平名さん「私の生きがい」


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 【本部】本部町伊豆味に住む饒平名ウトさん(98)は、梅雨の季節が好きだ。雨が降った後、アジサイの花は露を含んで輝き、どの季節よりも元気に見える。たった2株のアジサイが、今は1万株になり、青色のじゅうたんができた。ウトさんがアジサイと一緒に過ごす日々は、もう40年になる。

アジサイを育てて40年になる饒平名ウトさん。今年で99歳になる=3日、本部町伊豆味のよへなあじさい園

 戦後間もないころから、ミカンやパイン、ウコンを栽培し生計を立ててきた。ある日、義兄から2株のアジサイをもらい、畑の間に植えた。「花を見て怒る人はいないさ。だから、やってよかったさあ」と笑う。2株のアジサイは、挿し木をして増やした。畑に彩りを与えてくれることが、楽しみでもあった。

 「もう40年、いろんなことがあったけれど、アジサイと一緒に私も生きてきたんだねえ」。そう話すウトさんは、アジサイが孫にもひ孫にも見えてくるという。いとおしくてたまらないという表情で時折笑いながら、アジサイへの愛情を話してくれた。

 増やしたアジサイは口コミで広がり、多くの人が畑を訪れるようになった。2001年に「よへなあじさい園」として開園し、今年で15年になる。中には、アジサイではなくウトさん目当てで訪れる人も多い。来園者は、あじさい園の一番上にあるウトさんの自宅を訪れ、ウトさんと握手をしたり写真を撮ったりしている。

 ウトさんは「よく咲いてくれたねって感謝しますよ。アジサイを見て喜ぶお客さんの顔を見て、またうれしくなるわけさ」

 今年は梅雨に入っても雨が少なく、普段よりも早く枯れてしまうのではないかと心配している。そうでなくても、雑草を取ったり枝切りをしたり、アジサイを育てるのは難しい。「とっても手間が掛かるから大変な仕事だよ。でも、みんながいらっしゃるさ。もうやりがい、生きがいになってるからね」と気力に満ちた声で話す。「アジサイをいつまでも大切に育てていきたい」。それが、今年で99歳になるウトさんの元気の源のようだ。