伝統「葛の葉」あす復活 木下大サーカス沖縄公演


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約5年半ぶりに披露される「葛の葉」の練習に励む団員ら=12月29日、豊見城市の豊崎タウン特設会場

 音楽に乗せ、和装の女性が流麗な文字でふすまに別れの歌を書く―。木下大サーカスの伝統芸である「葛(くず)の葉」が5日、5年半ぶりに復活する。沖縄で披露されるのは2004年公演以来13年ぶり。

 「葛の葉」は、葛の葉姫に化けた白キツネが夫の安倍保名(やすな)と間にできた子(後の安倍晴明)に正体が露見し、元いた森に帰る際、別れの歌を残したという葛の葉伝説をモチーフに、足芸などを融合した演目。見せ場となる和歌を書く場面では、入社5年目の村木仁美さん(27)が右手だけでなく、口や左手でも書く。

 「葛の葉」は演者の引退に伴い、12年の公演を最後に演目から姿を消した。後継者に名乗りを上げたのが入社3年目だった村木さん。新しいことをやってみたいと始めたが、苦難の連続だった。

 公演の合間を縫って書道教室に通った。舞台での練習にも書道の先生を招き直接指導を受けた。文字だけでなく、動きの華麗さにも磨きをかけてきた。公演が決まったことに村木さんは「観客の皆さんに見てもらえるうれしさと関係者への感謝の思いを込めて演技したい」と意気込む。

 村木さんとふすまを下から支えるのは石垣市出身の下地和也さん(40)だ。下地さんは村木さんとふすまを合わせて約100キロを2本の足だけで支える。命綱を使用しないため、プレッシャーとの闘いが常につきまとう。下地さんは「地元である沖縄で『葛の葉』を復活できることは、喜びもひとしおだ」と語った。

 「葛の葉」は交代芸のため、披露されない場合もある。公演内容などに関する問い合わせは(電話)098(856)0045。