<シカゴ県人の助っ人>下


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「沖縄はとてもユニーク」と話すトム・プレスリーさん

◆歌・三線に打ち込む 演奏、方言も完ぺきに/トム・プレスリーさん

 異文化の芸能を自分のものにしてしまうことは、その文化を理解する柔軟さと才能、そして並々ならぬ努力が必要とされる。このほど開かれた芸能公演の中で、「西武門節」を三線を弾きながら哀愁を込めて熱唱したトム・プレスリーさんは、会場から割れんばかりの大きな拍手喝さいを受けた。「声だけを聞いたら全くのウチナーンチュ」といわれるくらい方言の歌詞も三線演奏も完ぺきだった。
 トムさんは以前、海兵隊員として沖縄に滞在していたが、その時は沖縄の芸能には全く興味がなく、もっぱら趣味のギターを弾いていた。それが、シカゴ移転後、日本系のスーパーで三線グループの存在を知ったことから興味を持つようになった。三線に打ち込むようになったのが6年前。そして、かりゆし会の大城幸信さんの勧めで一昨年、沖縄の新聞社主催の芸能コンクールの新人賞部門に挑戦した。
 その時は直接指導する師匠はなく、ビデオテープやカセットを使って練習。トムさんは「家では毎日2時間のけいこ。職場にも三線持参で、ランチタイムの時に練習した」と話す。その後沖縄に赴き、大城さんの指導で三線のけいこと正座でのあいさつの仕方を学んだ。
 いよいよコンクール。トムさんは「準備万端だったので全く緊張感はなかった。リラックスしてやれた」と笑顔で振り返った。そして、見事に新人賞部門に合格した。トムさんは、「若い時、軍で働く沖縄の職員たちから沖縄方言を習ったりして親しく付き合った」という。その経験から日本と沖縄の文化の違いを実感。「遠く離れていても、三線を弾くことによって沖縄文化とのつながりがあるので幸福に思う。何年か後に優秀賞にチャレンジしたい」と語った。
 今年、トムさんはシカゴ県人会の書記を務めている。夫人のスーザンさんの母親は名護市出身だ。(鈴木多美子通信員)