<ライフ イン NY>2 金融機関の監査を担当 平安百合子さん


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会計事務所でばりばり働く平安百合子さん=ニューヨーク市のオフィス

 世界経済の中心地、ニューヨーク市。金融関係の第一線で働く平安百合子さん(32)=浦添市出身=にアーンスト・アンドヤング・LLPの本社を案内してもらった。そこは、世界140の国で10万人が働く監査法人の会計事務所。世界規模のビジネスにかかわり、各企業の会計監査に携わっている。

 幼稚園を経営する両親のもとで自由に、個性豊かに育てられた平安さんは、地元沖縄の高校への進学ではなくアメリカ留学の道を選んだ。
 15歳での渡米。意気揚々と挑んだアメリカでの高校生活は、授業についていけず、辞書を片手に猛勉強が続いた。睡眠時間は毎夜3時間程度。「自分が負けたら、留学に出してくれた両親に申し訳ない」という思いで試練を乗り越えた。そして無事高校を卒業し、ニューヨーク大学に進学した。
 4年生になった時、進路を考え直すため、休学し、いったん沖縄に戻る。そこで就職し落ち着くにつれ、新しいことに挑戦したいという思いに駆られるようになった。
 再度渡米。州立大学のバファロー校に編入し、1年半で会計学の学士号を取得した。そして、ボストンで行われた就職求人フェアーで面接を受けた。4大会計事務所の一つといわれるアーンスト社に100倍の難関を突破して採用された。
 マンハッタンが一望のもとに見渡せるオフィスで平安さんは、現在監査部門に所属し、金融関係の監査を専門的に行っている。日本語を生かして主に日系の大手金融機関の監査を担当し、各会社の財務諸表が正確に作成されているかどうかの意見を述べるのが仕事。
 平安さんは「財務諸表が正確に作成されていない場合、その諸表で判断する投資家に損害が生じる恐れがある。そういうことが起こらないようにするために、自分の職業は社会的に責任が重大」と話す。外部監査以外に昨年平安さんは、米国大手証券会社の内部監査対応コンサルティングを担当した。
 「エイロンの事件がきっかけとなり、米国では内部統制の必要性が重視され、それに関する会計事務所からの意見を得ることが義務付けられるようになった。クライアントの内部統制を確立させ、外部監査人から問題点を指摘されないように行うことも自分の重要な職務」と平安さん。監査人として働き始めて3年目に入った平安さんは今、米国公認会計士の免許を取得するために勉強中である。
 長年親元を離れ外国で暮らしてきた平安さんは「一番大切なのは親だと実感している。いずれは沖縄に帰り親の面倒を見たい」と最後に笑顔で話してくれた。
 ニューヨークの風景が似合う洗練された雰囲気の平安さんは、自己アピールができる積極性を持ち合わせているだけでなく、周りを和ませる日本的な心配りができる魅力あふれる女性の印象を残した。
 (鈴木多美子通信員)