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児童の荷物 重すぎる 6年生なら9キロも 心身に悪影響の恐れ(愛媛新聞提供~パートナー社から~)


児童の荷物 重すぎる 6年生なら9キロも 心身に悪影響の恐れ(愛媛新聞提供~パートナー社から~) 小学生の荷物の一部。教科書が入ったランドセル、水筒、タブレットの他にも、曜日や授業によって持って行くものが増える(タブレットと水筒を一部画像加工しています)
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 「集団登校を見ていると猫背が気になり、孫のランドセルを持って重さにびっくり。ほかの荷物も多い。重さを軽減する方法はないのだろうか」―。松山市の小学校に通う孫を持つ男性から、愛媛新聞「真相追求 みんなの特報班」(通称・みん特)に声が届いた。6年生のある日の荷物の重さは約9キロに上ったという。小学生の子どもがいる記者も「荷物問題」の渦中にいる。現状を調べた。

 投稿者が、重さを量ったところ、教科書やタブレットなどが入ったランドセルは、ある1週間平均で小学4年生が4・2キロ、6年生は6キロ。ほかに、毎日、水筒約1キロを持って行く。

 さらに、月曜に持って行き、金曜に持ち帰る「月曜セット」は上履きや歯磨きセット、給食セット類が入り約1・5キロ。ほかに必要に応じ、習字セット(約1~2キロ)、絵の具セット(約0・5キロ)、体操服、雨傘も加わる。男性は「成長期の体への影響も心配」と不安げだ。

 近年は、従来の荷物のほか、近年は国が1人に1台タブレット端末などを配備する「GIGAスクール構想」を受けて端末の持ち帰りが増えた。

 教科書の大判化・増ページも進む。一般社団法人教科書協会(東京)の調べでは、2005年度には小学校の教科書はB5判が約96%だったのに対し、20年度はB5判より横幅が3センチほど大きいAB判が4割、縦横とも一回り大きいA4判も2割に。ページ数も全教科の1~6年の合計で05年度は4857ページだったが、20年度は8520ページに増えた。担当者は「指導要領の改訂で、学ぶべきことが増え、各社見やすさなどを工夫した結果」と分析する。

◆学校現場はどう考える?

 学校現場では、重さの軽減策を講じているのだろうか。松山市教育委員会の担当者は「特に週末は荷物が重くなることが想定されるため、図書の本や習字道具などを持ち帰る日を調整するよう、各学校に呼びかけている」と説明する。

 市内6校にも聞いてみたところ、すべての学校が勉強道具を置いて帰る、いわゆる「置き勉」を実施。一部で習字道具や絵の具セットは使った後の筆やパレットのみ持ち帰るという学校もあった。

 タブレットについては、家庭学習や欠席連絡での使用や、家庭での充電が必要なことなどから、基本的には持ち帰ると説明。ただ、重さの観点から、持ち帰らずに自宅のパソコンやタブレットを使うことも認めているという。学校の端末と使い勝手が違う機種の場合、子どもが不便さを感じる可能性はありそうだ。

 6校とも、必ずしもランドセルを使わなくてもいいことも分かった。記者の子どもも、リュックサックに切り替えた。近年は軽量のランドセル型リュックサックなども増え、選択肢が広がっている。

タブレットや教科書が入ったランドセルと水筒に加え、月曜セットと傘で両手がふさがる日も
(帽子の校章を画像加工しています)

 みん特には、市内の男性から「月曜セットを減らせないか」との意見も。6校に見解を尋ねると、ほとんどの学校が「子どもは新陳代謝が激しく、1週間履いた上靴、体操服などは洗った方がいい」「歯ブラシ・コップは子どもがゆすいだだけでは不十分な場合もある」など衛生面を理由に持ち帰りの必要性を強調した。

 荷物の重さについて、ある校長は「雨の日の月曜日は、かわいそうだと思うこともある」としつつ「どの世代の人も通ってきた道。成長を促す意味でも頑張りに期待したい思いもある」と複雑そう。別の校長は「特に低学年には重いかもしれない。今後は何らかの検討が必要かもしれない」と話した。

◆子どもたちの体への影響は?

 体への影響はないのだろうか。投稿者の情報を基に県医師会に問い合わせた。医師会は「重いランドセルを長時間背負って通学すると、肩の痛みや肩こりの原因となるほか、腰や首、背骨(脊椎)にもダメージを与える可能性がある」と指摘。十分に筋肉がついていないと体への負担だけでなく、通学が憂鬱(ゆううつ)になるといった心理面に影響を及ぼす可能性もあるとする。

 対策について「最善策は荷物を軽くすること」と説明。背負う時は、荷物をランドセルの背中に近い側に入れて動かないように固定▽革ベルトの長さを調整しランドセルが背中にぴったりくっつくようにする▽胸用ベルトを利用して重さを分散―など工夫してみるのもよいという。腰痛などを訴えた場合は放置せず、整形外科医の診断を仰ぐよう呼びかけている。(増田有梨)


【進むデジタル活用 紙教科書併用 薄い軽減効果】

 「通学時の荷物軽減へ、教科書をタブレットに取り込めないのだろうか」と投稿者の男性は愛媛新聞「真相追求 みんなの特報班」に意見を寄せた。現状や、他県の取り組みなどを調べた。

 文部科学省初等中等教育局教科書課によると、本年度から小学5年生以上の小中学生を対象に英語、算数、数学でデジタル教科書の活用を推進していくとする。ただ、「当面は紙の教科書との併用になる」としており、荷物の大幅な軽減にはつながらない。

 独自に、紙の教科書の代わりに、デジタル教科書が入ったタブレット端末を持って通学する取り組みを始めた地域もある。

小学生の荷物の一部。教科書が入ったランドセル、水筒、タブレットの他にも、曜日や授業によって持って行くものが増える(タブレットと水筒を一部画像加工しています)

 国のリーディングDXスクールに2校が指定されている富山県朝日町では、小学校全2校と中学校全1校で、新型コロナウイルス禍の時期に通年の水筒持参やタブレットの持ち帰りが始まり、重さを訴える家庭が増えたのを機に、昨年度の1学期に、紙の教科書の代わりにデジタル教科書が入ったタブレットを持って登下校する取り組みを試験的に実施。町教委によると、荷物の重さが平均で約2割軽くなり、生徒や保護者からおおむね好評を得たことから、2学期以降、本格実施している。

 中には「テスト前は紙の教科書で勉強したい」「視力の低下が心配」という声もあり、担当者は「紙の教科書の使用については、各自の判断に任せている」と説明。宿題もタブレットだけでなく紙のプリントも併用しているという。

 松山市教委にも、デジタル教科書に関して尋ねた。市教委は、小学5年~中学3年を対象に、英語は市内全域で、算数・数学は6~7割ほどの学校で導入済みと回答。ただ紙の教科書も併用しているため「現時点で重さの負担軽減にはつながらないのではないか」とした。

(増田有梨)

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