元WHO委員危惧する強毒化…増殖力に270倍差の実験結果も


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専門家会議では第2波への懸念が……(写真:時事通信)

「世間では第2波と騒がれていますが、現状でいえばまだ第1波が続いているという認識です。これから第2波到来となれば、ウイルスが“強毒化”していく可能性は十分あります」と警鐘を鳴らすのは、NPO法人「医療ガバナンス研究所」理事長の上昌広氏だ。

全国で緊急事態宣言が解除されたものの、東京都や北九州市などでは早くも感染者が増加中。本格的な第2波到来への危機感が高まっている。そんななかで危惧されているのが、新型コロナウイルスの“強毒化”だというのだ。元WHO専門委員でハーバード大学院卒の医学博士・左門新氏もこう語る。

「新型コロナウイルスは現時点で大まかにいうと、『武漢型』『欧州型』『欧米型』の3つに分けられています。そのなかで『武漢型』は死亡率が低いことから、“ウイルスの特性が違うのではないか”ともいわれています。

そして中国の研究者がサルの細胞を使って実験したところ、増殖の度合いが型によって最大で270倍も異なっていたそうです。増殖力の高いウイルスに感染させた細胞は死亡しており、“型によって毒性が違う”ということが初めて実験で確認されました。

あくまで動物実験なので、人間にそのまま適用されるとはいえません。ただ人間も同様の結果が出るとすれば、型によって重症化する可能性が大きく変わってくることになります。

コロナウイルスには風邪のような軽い症状のものもあれば、はるかに毒性の強いものもあります。その変異は、ランダムです。人に感染しないものになる可能性もありますし、死亡率35%となったMERSのようなウイルスに変異することもありえるでしょう」

■「ウイルスは15日に一度変異する」

発展途上国の感染症対策に取り組んできたグローバルファンドの國井修医師によると、「ウイルスは15日に一度は変異するともいわれている」とのこと。それだけ変異を繰り返せば、さらに強毒化したウイルスが出てくる可能性も否定はできないだろう。

また北里大学北里生命科学研究所の中山哲夫特任教授は、次のように指摘する。

「当初は高温多湿な季節になれば、自然と収束するのではといわれていました。しかし結果的に今回の新型コロナウイルスはたちが悪く、しぶといイメージです。実際、イランでは第2波のほうが感染状況もひどくなっているといいます。

ウイルスはすみやすい環境を求めて、変化していきます。新型コロナウイルスも、当初の形から変異しているようです。これからどう変異していくかは、わかりません。ただ間違いなく、“人に感染しやすくなっている”とはいえると思います」

強毒化だけでなく、感染しやすくもなっていく新型コロナウイルス。そのため、さらなる死者数の増加が懸念されている。

「感染者が減少している国もあるいっぽうで、南米やアフリカを中心に感染者や死亡者が急増している国も多いです。また、世界では毎日10万人以上の新たな感染者が報告されています。

もちろん各国が何らかの移動制限をしているものの、人の流れを完全に止めることはできません。日本にウイルスが入ってくる可能性はどこにでもあり、そこからクラスター化することもありえるのです」(國井医師)

■「感染拡大を防ぐのは難しい」理由

前出の左門氏も「感染拡大を防ぐのは難しい」という。

「MERSやSARSが流行したときは、発症したらすぐに重い症状が現れていました。そのため見つけやすく、隔離措置も取りやすかった。結果、早い段階で収束させることに成功しました。いっぽう、新型コロナウイルスは診断がつくまでに時間がかかります。また発症前の時点ですでに感染させる力があります。そのため、封じ込めるのが難しいのです。

新規感染者ゼロというのは、実際に感染した人がいないという状態ではありません。“実は感染しているけど症状がない人”が多数いて、彼らがキャリアとなって感染を広げていく。これが、まさに北九州市で起きたことです」

ではいったい、どうすればいいのだろうか。國井氏は、今後についてこう語る。

「前提として、経済を回すことと公衆衛生対策のバランスは重要です。ハイリスクの行動は禁止して、ローリスクのものについてはすべてを制限しない。そんな柔軟性ある対応が必要だと思います。

そのうえで、重症化する人については“いかに早いタイミングで加療できるか”が重要です。各国の失敗例や成功例を踏まえ、今のうちから第2波への準備を整えておくべきでしょう」

新型コロナウイルスとの闘いは、次のステージへと入っている——。

「女性自身」2020年6月23・30日号 掲載

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