ため息が出るほど美しい… 琉球美人画を現代女性が写真で再現【島ネタCHOSA班】


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版画や絵画を手掛ける著名アーティスト・名嘉睦稔(なか・ぼくねん)さんの作品を再現している写真がある、とうわさで聞きました。詳しく調べて教えてください。

(那覇市 美術館大好き)

インターネットで調査すると、睦稔さんの線描画集「おきなわのお嬢さん」をタイトルにしたバーチャル写真展の情報が目に入りました。睦稔さんといえば力強い版画のイメージがありますが、「おきなわのお嬢さん」は、若いころに繊細な線描画のタッチで年若い琉球美人(みやらび)をあでやかに描いた画集。この写真展は、モデル・歌手・女優として活躍中の県出身の宮城夏鈴(みやぎ・かりん)さんが主役となり、睦稔さんの絵の世界観を写真で再現するというプロジェクトです。

琉球かすりに身を包み、からじを結い上げた夏鈴さんの写真には、タイムスリップ感があったり、この女性がどこかにいそうだと思えたり……。なんとも不思議な印象です。調査員は、夏鈴さんと撮影を担当する仲程長治(なかほど・ちょうじ)さんに、写真展について話を聞くことにしました。

「おきなわのお嬢さん」の代表作「花冠」。沖縄の植物を冠にしています
これが睦稔さんの原画。そっくりです!(原画提供:名嘉睦稔)

沖縄魂を感じた絵画

企画もスタッフ集めも宮城夏鈴さん自身が行いました

実際に会った夏鈴さんは華やかな現代女性。「おきなわのお嬢さん」の古風なイメージとは別人のようで驚きました。

「3年くらい前に北谷町のボクネン美術館で作品を鑑賞し、睦稔さんのファンになりました。再び訪れた時に『おきなわのお嬢さん~麗しきみやらび~』展をやっていて、心も体もしびれるほど作品に引き込まれました。沖縄はこんなにカッコいいんだと、風土の魂のような物を初めて感じたんです」と目を輝かせて話す夏鈴さん。睦稔さんのメッセージから「沖縄には昔ながらの絵画があまり残されていない」と知り、「おばあちゃんたちが教えてくれる琉球の伝統が、これからはどんどん薄れていくのでは!? とハッとしました。感動と勇気をいただいた睦稔さんの絵画に関わりたくて、自分ができる事を考えました」。睦稔さんの絵の世界を写真で表現したいという思いを温めた夏鈴さんは、2年前に睦稔さんのマネージャーに思いを伝え、実現につながりました。

展示・写真集も計画

写真版の「おきなわのお嬢さん」は、草花やチョウにいたるまで睦稔さんの絵を再現した見事なアート写真に仕上がっています。写真の中で「琉球のみやらび」に変身した夏鈴さんは、自然に溶け込んでため息が出るほど美しく感じます。

撮影には夏鈴さん他、衣装・ヘアメークなどのスタッフがいますが、写真家の仲程さんは絵画の再現についてどう感じているのでしょうか。

「私は沖縄の自然を撮り続けているので、描かれた草花や風景とみやらびを写真で再現してみたいと思いましたし、睦稔さんが原画を描いていた当時を知っている。実は30数年前、同じ職場にいたんですよ」と仲程さん。引き寄せられた縁に心が動き、挑戦しようと決めたそうです。

裏話を聞くと、仲程さんと夏鈴さんは「自然が応援してくれている!」と声をそろえます。「曇り空で日の出を諦めたら奇跡的に朝日が顔をのぞかせた」など例を挙げるときりがないそう。そのおかげで朝や夕方、季節ごとの微妙な光など、自然の魅力が現れた写真が撮影できたと言います。

「睦稔さんを交えた対談をYouTube動画で公開予定です。会場での写真展も計画しますし、写真集も製作したい。夢をかなえている途中ですので、楽しみにしていただきたいです」と夏鈴さんは語ってくれました。

撮影プランを打ち合わせ中の夏鈴さんと写真家の仲程長治さん

みなさんもバーチャル写真展をのぞいてみてください。みやらびと自然にうっとりですよ!

〈撮影協力〉流求茶館     
〈電話〉098-862-3031

「おきなわのお嬢さん」バーチャル写真展は、インスタグラムで展開中。

 【Instagram】@okinawa_no_ojyosan
 

(2020年7月9日 週刊レキオ掲載)