「作られた炎上?」 -モバプリの知っ得![120]


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3月7日、あるWebメディアが「美少女ゲームがフェミニストからの批判で大炎上」という内容の記事を配信しましたが、ネット上でこのゲームが批判されて炎上しているという事実は確認できませんでした。

「炎上」とは、ネット上で批判が殺到し収拾がつかなくなることを意味しますが、実際のところ炎上の定義は曖昧で線引きが難しく、「炎上」かどうかは使う側によってゆだねられる側面があります。また炎上という言葉にネガティブなイメージを持つ人は多いと思います。炎上したということにされると、今回の場合は「ゲーム」と「フェミニスト」双方のイメージが悪くなってしまいます。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

2月も大手週刊誌が「人気女優のCMダンスに『嫌いになりそう』と苦情殺到」という記事を配信しましたが、企業側はCMに対する苦情を否定しており、「本当に苦情は殺到していたのか?」と逆に週刊誌側への苦情が発生しました。インターネットでは多くのニュースを無料で見ることができますが、それはページ内にちりばめられている広告による収入があるからです。その反面でネットニュースはアクセスが増えないとお金を稼ぐことができません。そのため、アクセス(お金)を稼ぐために、事実とは異なるインパクトのある見出しのニュース記事ができるわけです。こうした行為は「クリックベイト」【※1】と呼ばれています。また、クリックベイトは差別や社会的に弱い人を攻撃するフェイクニュースとも相性がよいことも忘れてはいけません。

デマでお金儲け…そんなネット社会 モバプリの知っ得![14]
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-535925.html

人々がデマを信じて拡散する方程式として、「R=I×A」というものがあります。
Rはデマの広がり、Iは内容の「重要さ」、Aは内容の「曖昧さ」です。

人間は他の人に知らせたくなる「重要な情報」に対して、「事実関係が曖昧な情報」が加われば加わるほど、より興味・関心を引いてしまいます。例えば、外国人やマイノリティな立場に置かれている人々は、母数が少ないが故に彼らに対する情報も少なく、デマのターゲットになることも多いです。

SNSで流れてくるニュースの見出しだけを見て「こんな事があったのか!」と私たちの感情は刺激されますが、見出しに踊らされずにきちんと記事を読んだり、書かれている内容をしっかり調べてみると大したことではないことに気がつきます。見出しだけを見てすぐに反応しない【※2】ように、しっかりと情報を受け止めるように意識してみましょう。また誤った先入観を生み出さないためにも、SNSのタイムラインを多種多様な人たちをフォローしてみたり、自分の考えが偏りすぎないようにチューニングしていくことが大切です。

※1 クリックベイト… ユーザーの興味を引くよう、派手な文字・サムネイルでアクセス稼ぎをすること。ベイトは「餌」の意味。不祥事を起こしたタレントの身内を名乗るYouTuberなどもクリックベイトの一種です。

※2 見出しだけを見てすぐに反応しない… SNS大手のTwitterは昨年9月より、記事を読まずにシェアしようとすると「見出しだけで記事の中身は分かりません」と警告する機能を段階的に導入しています。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」3月14日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/