俳優の西田敏行さんのうその情報をブログに書き込み、所属事務所の業務を妨害したとして3人の男女が書類送検されました。
記事:西田敏行さん虚偽記事で書類送検 男女3人、偽計業務妨害の疑い
3人は、インターネット上で自身が運営するブログに「俳優・西田敏行は違法薬物を使用し、女性に暴力を振るっている」などの内容を書き込み、西田さんを誹謗中傷しています。
警察の調べに対して3人は「広告収入目的でやった」と述べているとのことです。
現在のインターネットは内容を問わず、アクセス、閲覧数を集めることでお金儲けができる仕組みになっています。そのため、今回発覚した誹謗中傷の書き込みは、氷山の一角です。
ネットで主流の「広告収入」
みなさんも、インターネットで見られるほとんどのサイト・ブログは無料で読むことができますよね。
通常、人々がインターネットにページを持ちたい場合、サーバーを設置するか、レンタルする必要があります。また仕事として記事を書く場合は、当然ながら人件費が発生します。
サーバー管理費や人件費などのコストが発生しながらも、無料で読むことができるのは、多くのサイトが広告バナーを設置し、そこから広告収入を得ているからです。
ですので、インターネットはCMを流すことで、視聴者が無料で視聴できるテレビ・ラジオと構造的にはかなり似ています。
ネット広告は種類も豊富!その仕組み
インターネット広告は、数多くの種類があります。
有名どころはGoogleの広告収入プログラム「Googleアドセンス」です。
Googleに申請を出すと簡単な審査で、誰でも使えるようになります。
登録完了後、自分のサイト内にGoogleアドセンスの広告バナーを設置することができるようになり、読者がバナーをクリックすることで、サイト管理者にお金が振り込まれます。
状況によって変わりますが、1クリックの単価は数十円です。
この単価でお金を稼ごうと思うと、数千クリックが必要になります。
しかし、サイトを見にきた読者全員が広告をクリックするわけではないので、本当にお金を稼ぐためには数十万アクセスが必要になります。
これだけインターネット上に情報が溢れかえっている今、数十万アクセスを集めるには、独自性・専門性に加え、知名度やサイトの構築テクニックなどが必要になります。
つまり、ネットの広告で稼ぐためには、かなりの高さの壁が立ちはだかるのです。
こうした構造を簡単に取っ払うことができるのが、うそや過激な言葉で注目を集める方法です。情報の曖昧さと重要度が高まれば高まるほど、その情報は拡散されるからです。
記事:ネットで広がるデマ情報 方程式と3つの対策 モバプリの知っ得![1]
Googleアドセンスの広告バナーはクリックに応じて広告料が支払われるため、サイトの書き込みの正確性は問われません。
今回の西田敏行さんに関する誹謗中傷の書き込みは、アクセス稼ぎの典型とも言える事例でした。
アメリカ大統領選まで飛び火したフェイクニュース
こうしたうその情報でお金儲けをたくらむ人々は世界中にいます。
2016年のアメリカ大統領選では、旧ユーゴ圏のマケドニアの小さな村で広告収入目当てのフェイクニュースサイトが大量に作られ、波紋を呼びました。
トランプ支持者の喜ぶ捏造記事を作り、アメリカに向けて配信し、アクセスを集めたとのことです。
記事:「トランプ支持者向けの偽ニュースで700万円稼いだ」マケドニアの若者が証言
日本でも、今年の1月に韓国デマサイトが話題となりました。 BuzzFeed Japanのインタービューにて管理人が手口を全て白状したからです。
記事:韓国デマサイトは広告収入が目的 運営者が語った手法「ヘイト記事は拡散する」
この偽ニュースサイトでは「韓国ソウル市日本人女児強姦事件に判決 一転無罪へ」と題された記事がSNSで多くシェアされました。
SNSは、自分と考え・属性の近い人たちでグループを構成しがちになるため、こうしたうその情報もすぐに広がり、また訂正がしにくくなります。
記事:あなたも陥っていませんか? SNSのエコーチャンバー現象 モバプリの知っ得!
特に政治のネタはSNS上でコミュニティが出来上がっていることが多く、一定のコミュニティの主義主張にハマれば短時間で拡散します。そのため、お金儲けを考える人たちの標的になることも多く、うそが紛れやすくなっているので注意が必要です。
ゴシップはネットだけではないけれど…
話を西田敏行さんの事件に戻します。
タレントや有名人の根拠のない情報、ゴシップは、インターネットだけの問題点だけでなく、週刊誌やスポーツ紙などでも多く見られます。
しかしながら、所属を明らかにしている「会社」が発行している週刊誌やスポーツ紙などと違い、インターネットは運営元が分からないページが無数にあります。
そのため、名誉を毀損されたタレントや有名人側が訴えを起こすときに、週刊誌・スポーツ紙であればその会社を訴えて済むのですが、インターネットの場合は、書き込まれた一つ一つのサイトを細かくチェックし、警察に相談に行くことになります。
西田敏行さんの件では、所属事務所はホームページに以下の文章を掲載しています。
弊社所属の俳優 西田敏行に対するネットによる誹謗中傷の書き込みについて赤坂署に相談して参りましたところ特に悪質な3件について、7月5日に送致されました。捜査に当たって頂いた警察の方々に敬意を表します。 今後このような心無い書き込みが無くなる事を祈ります。
注目すべきは“特に悪質な3件について”の部分です。
実際は、インターネット上には西田敏行さんへの誹謗中傷が未だ多く残ったままですが、警察が動いて書類送検したのはこの3件だけです。
誹謗中傷の書き込みを全て把握し、削除するのは困難です。
また、残ったうそ情報を信じ、さらなるうそが重ねられる可能性もあります。
GoogleやFacebookも対策中 でも一番の対策はユーザーの心がけ
現在、Facebookはフェイクニュースが広がらないような仕組みをアメリカなどで導入中。GoogleやTwitterなども独自で少しずつ対策を取り始めています。
しかしながら、きちんと排除できるには時間がかかると思われる上に、うそを広げる側も隙間を塗って手口をアップデートしてくるでしょう。
結局のところ、(少なくとも数年間は)私たちの心がけが一番重要でしょう。
信ぴょう性不明のサイトは「見ない」「信じない」「広げない」の三原則を意識して対応してみてください。
琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」7月16日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。
親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。
【プロフィル】
モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。