ライフスタイルを一変させたスマートフォン
携帯電話業界に革命を起こしたiPhoneが2007年にアメリカで登場して今年で10年。
日本の携帯電話は独自進化を遂げていたため、「スマートフォンは日本で流行らない」との声も多く上がっていました。こうした予想をくつがえし、さまざまな機能を取り込みながらスマートフォンは成長を遂げ、現在では生活必需品となっています。
スマートフォンと高速なモバイル通信により、インターネットは私たちの生活と密接なものとなり、実社会と地続きとなりました。
生活と密接になったことで依存症の問題が、実社会と地続きになったことでインターネットによるトラブルが起き、生活に大きく影響するなどのデメリットも生まれてきました。
便利なものほど、使い方を間違えると脅威になります。
例えば、自動車は私たちの社会に無くてはならないものですが、死亡事故も多く危険と隣り合わせです。
教習所に通って運転を練習し、座学で交通ルールを学び、合格することで初めて公道で運転が可能となります。
一方で、現在のスマートフォンやインターネットは、操作やルール、注意点を学ぶ場所がほぼないため、ほとんどの人が独学で使用しています。車に例えると、“公道を走っている車のほとんどが無免許運転。こちらがどれだけ注意していても、追突される可能性が非常に高い”―。そんなハイリスクな世界になりつつあります。
沖縄でもあった デマの拡散
沖縄市のアフガン出身男性、「米軍狙いテロ」とデマ被害
2016年12月25日
スマホやネットのトラブルの一例が、2016年12月に沖縄で発生したデマの拡散です。
「クリスマスに美浜でテロが計画されている可能性があります。この人がテロリストなので気をつけてください」との文言がFacebookなどで出回りました。その注意文に、沖縄に住んでいるアフガニスタン人の男性の写真が添付されており、勝手に犯人にされていました。
もちろんこの男性はテロリストではなく、出回った情報は事実に基づかない情報でした。
みんなが適切に判断できれば、デマの拡散は防げたはずです。
デマが広がる方程式
こうしたデマはなぜ広がるのでしょうか。
デマ・流言研究の古典『デマの心理学(1947年)』にて著者のG.Wオルポートはデマを公式で説明しています。
R=I×A
Rはデマの広がり、Iは内容の「重要さ」、Aは内容の「曖昧さ」です。
今回の件は、「テロが起きたら命が危ない」という重要度が高く、2日後の新聞報道まで明確な情報がない曖昧な状態だったため、かなりの範囲に情報が広がりました。
人は、重要な情報であればあるほど、みんなに知らせたくなるものです。
その気持ちは善意、優しさかもしれませんが、結果として無実の人を犯罪者予備軍にしてしまう恐ろしいものでもあります。
また、本当に緊急事態が発生した時には、不確かな情報が人の気を引く「ノイズ」となり、逆に足を引っ張る可能性も出てきます。
重要であればあるほど、曖昧であればあるほど、デマとして広がりやすいので、そうした情報にあたる時は細心の注意を払った方がいいでしょう。
『デマの心理学』が発行された時代であれば、2日で広がる範囲も知れていたかもしれません。
しかし、インターネットと密接になった現代では2日でかなりの範囲に情報が広がります。
デマ情報を見極める3つのポイント
そこで、情報を見極めるポイントはおおむね以下の通りです。
1.その情報が「事実」「推測」「意見」どれなのかを意識する
2.情報源を意識する
3.複数から発信されている情報か確認する
詳しく説明しましょう。
1.まずは、情報を事実、推測、意見などに分類してみることです。
「知り合いが言ってた」「~らしい」などの曖昧な推測が多い情報は、即、身構えましょう。
これはデマだけに限らず、会議の仕切りやケンカの仲裁など日常でも使えるテクニックなので、普段から意識するといいかもしれません。
(ちなみにこの記事は「モバイルプリンスが書いている」「美浜でテロが起こるという情報が流れた」「デマの心理学で公式がのっていた」あたりは事実。後半のデマ対策は私の意見です)
「事実です」「真実です」という言葉が含まれていても、本人の思い込みの場合もあるので注意が必要です。
2.情報源を意識する
情報を見極めるのに、もっともベターな方法は「複数の新聞社が報じているか」です。
新聞社では取材を重ねて事実誤認がないように、複数人でチェックして掲載しています。それゆえ、個人ブログや匿名掲示板と比較すると「誤報」が出にくい仕組みになっています。
3.複数から発信されている情報か確認する
ただし人間が作業をしている以上、間違いや誤字なども発生するので、1社だけでなく、複数の新聞社が報じているかを確認するのが一番です。
いずれにしても、情報が溢れている時代、今後さらに情報量は増え、自分で取捨選択する技術が試されます。
こうした見極めの技術は一朝一夕で鍛えられるものではないので、日々意識することが大事です。
4月から、琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」で、「モバイルプリンスの知っとくto 得トーク」という連載がスタートしました。
りゅうPON!では、小学生にも伝わるよう、この記事よりもかなり柔らかい書き方をしています。この琉球新報styleでは、りゅうPON!と同じテーマを、もう少し掘り下げて紹介したいと思います。
りゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて親子でネットスマホとの付き合い方を考えるきっかけになっていただければと思うので、これからよろしくお願いします。
【プロフィル】
モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。 特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。 親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。