「ルッキズムの呪い」に屈しない -モバプリの知っ得![122]


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東京五輪開会式の演出で「女性芸人をオリンピッグ(豚)として変身させる」との案を出したとして、演出の統括役でクリエーティブディレクターの男性に非難が殺到※1しました。これまでバラエティー番組などで人の容姿や見た目を揶揄(やゆ)したり、笑いの対象にした時代がありましたが、人々の価値観が変化し「こうしたネタはよくない、笑えない」とノーを突き付けたということですね。

人を見た目だけで判断することを「ルッキズム」といいます。
太っている、痩せている、背が高い・低い…など、私たちは「かっこいい・かわいい・美しい」とされる価値観に憧れ、過酷なダイエットや美容整形などで理想に近づこうとします。
しかし、そういった「見た目の違い」について、私たちはメディアや文化などからある種の価値観を押し付けられているのではないでしょうか。

特に若者の人気のSNSでは、ルックスがいいとされている人たちに対して、「いいねの数」や「フォロワー数」といった数字が集まりやすい傾向にあります。
雑誌やテレビなどのメディアに出てくる芸能人たちは、ある特定の「価値観」に沿ったルックスの人たちを集めて発信していますが、今は一般人もSNSで気軽に発信でき、芸能人と同しく「数字」で可視化することができます。その側面で「友達はこんなに“いいね“をもらっているのに、それに比べて自分は…」といった、「ルッキズムの呪い」を受けやすくなっています。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

人気のSNSは無料で使える代わりに、アプリ使用中に広告を出すことによって特定の美意識に誘導し、商品を買わせるという世界が広がっています。しかし、本来「美の価値観」は誰の目から見ても明らかな答えはないものです。30年前と今では「かわいい」の基準が違いますし、同じ2021年でも日本と外国では「かっこいい」の基準が違います。身長や体重はただの数字で、その人の全ての価値を表した数字でもないのです。

今回、CMクリエイターの案には批判が殺到しましたが、若者に人気のスマホアプリ※2では「かっこいい・かわいい」とされる人に人気が集まるシステムになっています。本来は、それぞれに違いがあって、その人の魅力は見た目だけでは決まらないはずですが、こうしたアプリを見続けることで、無意識のうちに「かわいくない私には価値がないんだ」と落ち込む若者も増えています。人の見た目・体型・容姿に安易に口出ししたり意見したりすることは、これからの社会でノーを突き付けられます。同時に自分の容姿に関しても「ルッキズム」の価値観で呪われないようにしましょう。

※1 非難が殺到… 東京五輪演出チームのLINEのやりとりを週刊文春が報道(21年3月25日付)しました。CMクリエイターで五輪開会式「総合統括」だった男性は報道の内容を認め、辞任を表明しています。

※2 若者に人気のスマホアプリ… Instagram・TikTok・YouTubeなどのアプリで、「太っていたから友達から嫌われた」「体毛が濃いから恋人に振られた」など、人の体のコンプレックスを刺激する広告を見たことがないでしょうか? 商品を売るために人を傷つけたり不安にさせる「コンプレックス広告」も現在問題視され、アプリ側の広告規制が求められています。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」3月28日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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