「ディープフェイク」が生活を壊す!?気をつけたい加工アプリとの向き合い方 -モバプリの知っ得![125]


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今年2月に福島県・宮城県沖で震度7強を観測した大きな地震が発生しました。その時の加藤勝信官房長官の記者会見映像が「笑顔」になるように加工され、「こんな時に笑っている官房長官許せない!」とデマがツイッターで拡散されました。

AI技術を活用したかのような仕上がりで、パッと見ただけでは、加工された画像とはすぐに判断できないような精巧さでした。こうした技術は「ディープフェイク」※1と呼ばれ、人の表情を簡単に変えることができます。今後は動画の顔合成などもスマホで行えるようになるでしょう。

スマートフォンが普及した今において、たくさんの種類の加工アプリが日々生まれています。面白いエフェクトをつけてアートっぽくしたものから、一重から二重に変えるなどパーツを加工できるアプリ、中には顔を入れ替えるようなものもあります。こうした加工技術は、ひと昔前まではパソコンにより専用ソフトを使って時間をかけないと作れないものでしたが、今ではスマホにより誰でも簡単に作ることができます。手軽にできる分、簡単に悪用することもでき、それによってデマが広がる恐れもあります。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

事実に基づき政治家を批判することは「言論の自由」ですが、デマで攻撃をすることは名誉毀損に当たる可能性もあり、何より民主主義を破壊します。また、加工されたものかどうか判断するツールもありますが、そういったツールがでてきても安心はできません。技術の進歩によりそれらを上回るくらい精密な加工アプリがでてきて、いたちごっこが繰り返されることでしょう。

今後ディープフェイク技術がさらに向上すると、人の目で見極めることが困難になり、私たちの情報を選ぶ能力はより重要になります。いつ・誰が投稿したものか。その主張に根拠はあるのか。複数のメディアが報じているのか。正確性が判断できなければシェアやコメントを避けるくらい慎重になる必要があります。

こうした正しい情報かどうか判断する力は一朝一夕で身につくものではなく、すごく細かい確認作業の繰り返しになります。しかし、意識しながら判断をしていくという積み重ねがデマをなくすことにつながります。

情報の正確性の確認とあわせて、他人の顔写真や動画などを勝手に加工・編集して公開することも慎重に考えないといけませんね。自分は「こう加工するとかわいい」と思っても、相手が快く思わない可能性がありますから。友達を今回のような「真逆の表情になるよう加工」すると、絶縁されてもおかしくありません。簡単に使うことができる画像加工アプリだからこそ、使うタイミングなどを強く意識してみましょう。

※1 ディープフェイク … AI技術で写真・動画を加工する技術。高度なものになると人間の目で見破ることは難しく、ディープフェイクを見破るAIなども開発されています(しかし、その上をいくディープフェイクが現れ…とイタチごっこになる可能性もあります)

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」4月18日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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