読書のススメ -モバプリの知っ得![131]


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私が、小中学校でスマホ・ネット利用の講演会を行った際、真剣に聞いてくれた生徒の皆さんから「スマホをきちんと使うためには、何をしたらいいですか?」と質問を受けることがあります。その時は「たくさん本を読んでください」と答えています。読書は集中力を鍛え、言葉の勉強にもなるからです。

スマートフォンでは「音楽を聴きながらSNSを見て、LINEが届いたら返事を書く」など、複数のことをほぼ同時に行うことができます。こうした動作を「マルチタスク」※1 と呼びます。マルチタスクは一見便利に思えますが、私たちの集中力を削ります。SNSを見ている時も頭の片隅では流れている音楽の歌詞が引っ掛かり、またLINEの返事を待ってソワソワしているのです。

さらにほとんどのスマホアプリは、私たちが使えば使うほど広告で儲かる仕組みとなっています。あの手この手を使い、自分たちのアプリに興味を持ってもらうよう必死に動きます。こうして、私たちはスマホを触るといろいろなアプリを乗り換えながらどんどん時間が奪われていき、時には「なんで今スマホ使っているのだ?」と大元の理由を忘れてしまうことも。

打って変わって、本を読むという行為は、本の世界に集中することができます。まずは1日15分でもいいので、一つのことに集中する時間を確保することが大事です(慣れてきたら徐々に伸ばしていきましょう)。補足として、世界中で「マインドフルネス」というヒーリング行為がブームになっています。マインドフルネスも「今、この瞬間に意識を向ける」ことを大切にしています。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

さらに、本を読むことは文章に触れるということです。短文投稿SNSのTwitterなどと違い、本の場合は数万文字が一つの物語になっているため、文字を読み込む「スタミナ」がつきます。また作者が何を伝えたいのか、どうした意図でこの言葉を使っているかを考える作業にもなります。

スマホの利用トラブルで多いのが「LINE・SNSで友達と喧嘩になった」というものです。よくよく話を聞くと、お互いに悪気はなかったけど、言葉がうまく伝わらず徐々にすれ違い、最後は喧嘩になるというパターンです。感情が伝わりにくいテキストコミュニケーションはとても難しく※2 、言葉のチョイス一つで行き違いが発生します。そういう意味でも文章を読み解く力は、語彙力は長い文章を集中して読み取っていくことが大事。できれば、読書をした後に言葉を上手く言語化できるように日記やブログで言葉の表現を意識して書いてみることをおすすめします。緊急事態宣言で外出なども控え目になっていると思いますが、この機会にお家でじっくりと本を読んでみてください。

※1 マルチタスク… ベストセラーになった『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著)でも、マルチタスクが集中力に悪い影響を与えることを、1章まるごと使って説明しています。また、スマホアプリが私たちにちょっかいを加え、かまってもらうよう振る舞うことを「アテンション・エコノミー(関心経済)」と呼びます。

※2 テキストコミュニケーションは難しい… 例えばクラスメートが大会で賞をとった時「○○さん、すごくない?」と書けば、ほめていると分かりますが、「◯◯さん、すごくない」と、はてなを抜くと否定的な意味になってしまいます。直接対面してしゃべるコミュニケーションの場合は、表情・身ぶり手ぶり・声のトーンなどでニュアンスが伝わりますが、テキストコミュニケーションの場合は周囲の情報がなくなるため、伝えるハードルが一気に高まります。さらに「マルチタスク」で、動画を見ながらあまり集中せずに文章を書くと…さらに伝えるのが難しくなりますね。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」6月6日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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