西表島の豊かな自然と文化をつなぐために 映画で伝える島の魅力と課題

  • 沖縄県全体
このエントリーをはてなブックマークに追加


映画が映す西表島の自然と文化
 


島の中央部にある神秘的なイタシキの滝(通称:マヤグスクの滝)

西表島の伝統文化継承者であり、三線の名手としても知られる石垣金星さん


国指定特別天然記念物のカンムリワシ。イリオモテヤマネコと共に西表島の食物連鎖の頂点に立つ

サガリバナが水面を流れていく様は西表島ならではの風景


東洋のガラパゴスといわれ、世界自然遺産への登録が間近とされる西表島。このほど、島の豊かな自然と暮らしを3年近く撮り続けて製作したドキュメンタリー映画『生生流転』(せいせいるてん/仲程長治監督)が完成。7月22日から無料配信し、那覇市内では映画の世界観を伝えるアート展示、チャリティーグッズ販売などの公開記念イベントを開催する。美しい島で生きる人々の日常を描く本作を鑑賞することが、「西表島の今」を知る機会になりそうだ。写真は仲程監督が撮影した西表島の数々の風景。



豊かな自然と文化をつなぐために

2019年4月に活動をスタートした「Us 4 IRIOMOTE(アスフォーイリオモテ)」は、西表島の「明日」のために考え、行動するプロジェクト。絶滅危惧種のイリオモテヤマネコをはじめとした希少種の動植物を育む自然を敬い、共に生きる島の人々へ思いやりを向けようと呼び掛け、旅先での意識と行動を変える「エシカルな旅」を提案するプロジェクトの一環として、西表島の魅力と共に課題も伝える映画を製作した。関係者に話を聞いた。


西表島の歴史ある集落の一つ、祖納生まれの石垣金星さんの暮らしを映画は追いかける

「アスフォーイリオモテ」というプロジェクトは、アメリカのシューズメーカー「KEEN(キーン)」がきっかけをつくりスタートしたという。事務局スタッフの松島由布子さんによると、商品撮影で西表島を訪れたキーンの代表者が、豊かな自然に感動したとのこと。「シューズメーカーとして自然保護のためにできることはないかという思いから、イリオモテヤマネコをモチーフにしたシューズを開発して発売。その売り上げの一部を資金にした活動を始めたいということでご縁をいただき、2017年から現地調査を始めました」

西表島の現状を知るうちに、松島さんたちの中には「旅行者を含め一人一人が、西表島の明日のために行動する」というコンセプトができ正式に活動開始。自然保護や文化継承に取り組む人々の協力で、活動が広がっているという。プロジェクトでは、いつまでも美しい島であり続けることを願い、旅先にはごみになる物は持ち込まず地産地消のお土産を購入するなど、「思いやりを持った旅をしよう」と旅行者に呼び掛ける。なぜそのような取り組みが必要なのか、西表島の素晴らしさを映画を通じて少しでも感じてもらえれば、と話す。

「コロナ禍で完成が1年延びましたが、結果的に良かったと思っています。最初の2年に撮影したことを、1年かけてゆっくりと腹に落とし込んだ感覚です」と松島さん。「この映画をきっかけに旅のスタイルや日々の暮らしがほんの少しでも変わったらうれしい」との思いを胸に、たくさんの人が鑑賞してくれることを願っている。


自然と島民が共存する島


西表島在住15年を数えるエコツアーガイドの國見祐史さんも、プロジェクトに関わるスタッフの1人。

「自然の中で働きたい気持ちがあり、早い段階で日本でエコツアーが確立していた西表島に来ました。勉強のためと思っていましたが大好きな島に仲間ができ、ここに生活の全てがあると思え、家族で根差して現在に至ります」と國見さん。島の豊かな自然が島民の生活を支え、共存しながら歴史や文化をつくり続けているのが最大の魅力と語る。またここ数年間で組織と関係機関との連携体制が加速し、環境改善が図られていると実感することもあるそうだ。


Us 4 IRIOMOTE事務局の松島由布子(まつしま・ゆふこ)さんと國見祐史(くにみ・ゆうじ)さん

映画について國見さんは「一過性の観光スタイルでは見ることができない日本最後の秘境である西表島の姿と、歴史を紡ぐ人々の生き方が体感できると思います」と期待する。ネット社会の現代に届いていない大切なことが島にはたくさんあるとも語り、「ガイド自身の生活を通して、みなさまと島の距離を近づけます。西表島で遊ぶ時はぜひガイドにお声掛けください」とメッセージをくれた。

旅人が島のためにできることく

旅先への敬意と思いやりを持つ「エシカルな旅」を沖縄で広げることは、SDGs(持続可能な開発目標)につながると述べる松島さん。

「海岸やマングローブ林に流れ着いた大量の漂着ごみを見ると、普段の生活の中でのつかう責任を痛感します。そして持続可能な観光スタイルが広がれば、島の経済や島民の働きがいにもつながります」とも。SDGs の視点でも、プロジェクトへの注目が高まるだろう。


監督を務めた石垣島生まれの写真家、仲程長治(なかほど・ちょうじ)さん

監督の仲程長治さんは、通って知るほどに西表島の素晴らしさを少しずつ感じられるようになっていったと話す。「全ての命がつながりあって、回帰する時間の中で少しずつ変化しながら、ゆったりと循環している水の島」と感じた島の姿に何度も感動し、心が震えたという。

亜熱帯の森にマングローブの川や海、たくさんの動植物、島民が祈って感謝する祭りの場面…本作で映し出されるのは、ありのままの西表島の姿。鑑賞しながら四季や暮らし文化に触れて旅行気分を楽しみ、訪ねた時にできることを考えてほしい。

(饒波貴子)





「Us 4 IRIOMOTE The Movie 生生流転」(せいせいるてん)

海の日7月22日19時から無料配信スタート!
詳細は公式サイトをご確認ください。

https://www.us4iriomote.org

※那覇市内で公開記念イベント開催
7月22日(木)~8月1日(日)
会場:ホテル アンテルーム 那覇
問い合わせ先:TEL 098-860-5151

 


(2021年7月22日付 週刊レキオ掲載)



WSJ特設サイト

前の記事目指せ世界進出! ウチナー&ネパ...
次の記事漫画・東京ざっ荘物語「光熱費」