正月特番の大炎上から考える やまないインターネット上の誹謗中傷 モバプリの知っ得[161]


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あけましておめでとうございます。2022年一発目の話題は、正月のテレビ番組の放送内容に起因して起こった誹謗中傷問題を取り上げたいと思います。

今月1日に放送されたTBS系番組「ジョブチューン」に審査員として出演したシェフに対して、ネット上で誹謗中傷が起きました。さらにはこの審査員と同じ姓である全く別人のシェフに対しても誹謗中傷が飛び交う事態となりました。

事の発端は、「コンビニ大手三社の商品を一流シェフが食べて、合格か不合格かを判断する」というコーナーに対して起こりました。とあるシェフがファミリーマートの商品に対し、「ビジュアルが悪く、食べたいと思えない」と発言し、試食を渋ったことで、これに怒りを覚えた人が彼のレストランの口コミサイトやSNSが荒らされて大炎上する事態となりました。また、この件に関係ない名前が似ている全く別人のシェフに対しても、人々の勘違いから飛び火する形で炎上する事態となっています。

(この件に関して言うと「食べずに評価するな」と怒り炎上を起こしている人たちが、そのシェフのレストランを食べずに口コミサイトで低評価しているという現象はとても皮肉が効いていますね)

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

テレビやネットの動画、スポーツ中継を見て感情が揺さぶられ、感想を言い合うということは、エンターテイメントの醍醐味であり、何も問題ありません。でも今の時代はネットを使って良くも悪くも当の本人に対して声が届くようになっています。感情が揺さぶられるあまり「誹謗中傷」を行うと、名誉毀損や侮辱罪などの犯罪に当たる可能性があります。言うまでもありませんが、間違った認識を基に関係のない第三者(今回は似た名前の別人のシェフ)を誹謗中傷することも許されない行為です。

ましてや、シェフの態度が気に入らないからと言って、口コミサイトで低評価をつけるというのは一線を超えています。売っている「モノ」に対してではなく、「作り手が嫌いだから」という理由で低評価を付けるのは営業妨害に当たる可能性があります。好き嫌いで判断するのは「批判」ではありません。

番組を見て感想を言い合うということは許されている行為ですが、タイミングや発信の仕方を考えると誹謗中傷になりかねません。今の時代は全員が発信者になる以上、線引きを考えながらネットで投稿する際は毎度自分で考えながら判断力を養っていくしかありません。

テレビ番組を見て憤った人たちが炎上騒ぎを起こすのは今回に始まったことではありません。2020年にリアリティーショー「テラスハウスTOKYO 2019-2020」に出演していたプロレスラーの木村花さんにSNSで誹謗中傷が殺到し、自ら命を絶ってしまうという悲しい事件がありました。誹謗中傷は彼女の母親の木村響子さんにも向けられ、追い打ちをかけるように遺族を傷つけています。

この件から政府や警察は「ネット中傷」対策に本腰を入れ始め、法令の整備に取り組み、犯罪として立件するケースも増えてきています。これも今回と構図と似ていて、当時からあまり変わっていないと実感しています。人々が自由にネット上で書き込みができるようになった時代において、番組を制作する側も過剰にあおったりせず、出演者を守るような仕組みを作る工夫が求められます。その一方で、自由に意見を書き込む私たちも、事実をきちんと調べ、あおられずに誹謗中傷にならないように心がける必要があります。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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