スラング使用で契約解除 時代と共に変わる言葉の使い方 モバプリの知っ得[169]


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先月15日、プロゲーマーの女性がネット配信の中で「身長が170cmない男性は人権がないんで」などの発言を行い、批判が集まりました。この発言が問題視され、翌日16日にはスポンサー契約解除、17日にはゲームチームの契約が解除される事態になりました。

この発言は「恋愛対象として、付き合う男性は身長が170cmはあった方がいい」という事を言いたかったのでしょうが、ゲーマーの人たちがよく使う「人権がない」というスラング※1を使ってしまい、悪意を持って発言したわけではなかったと思いますが、意味がかなりキツくなってしまいました。

「スラング」とは、特定の人たちの間で使われる汚い言葉を指します。最近では「パワーワード」と呼ぶこともあります。こうした言葉は仲間意識が芽生える効果もあるため、配信者などが使いたくなる気持ちはすごく理解できます。同時に、使い方を少しでも間違えるととんでもない意味へ捉えられるリスクもあります。

実はこうした事例は過去にも多く発生しており、2021年8月にはメンタリストの男性が自身のネット配信の中で「ホームレスの命はどうでもいい」といった発言が問題となりました。ネット上でよくある事例として、自身のファンが見ている配信では、過激な発言もスルーされたり、または喜ばれる傾向にあります。しかし、一線を超えたところで外部に声が届いて大事になってしまいます。(政治家の失言もこれに近い構造がありますね)。

ネット上では「自分の親しい人しか見ていない」と思い、つい過激な発言や行動を取ってしまいがちで、バイト先でついふざけた行動をした動画がSNSで拡散されて炎上する「バイトテロ」も友達しか見てないと思ってふざけたら、外部の人に見られて批判が集まるという形です。一線を越えてしまっても、本人は気づけません。友達と指摘しあったり、幅広い人と触れ合ったりして、自身の行動が過激化していかないように、自分自身でブレーキをかける具合を学んでいくことが大切です。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

言葉は、使う場所や前後の文脈、相手との関係性などによって受け取られる意味が大きく変わってきます。使い方を間違えてしまうことで、人間関係に大きなヒビが入ったり、今回のように仕事に悪い影響を及ぼすこともあります。ネットやSNSでは自分と感覚が近い人と頻繁に交流しやすいようにできています。そのため当たり前に使われている「スラング」が、他の人たちが聞くとギョッとして批判されることがあるのです。また言葉は持つ意味が時代の変化と共に変わってきており、今までは当たり前のように使われていた言葉でも、今は使うのを止めた方がいい言葉も多く、意図しないところで誰かを傷つける可能性もあります。改めて使っている言葉の意味をしっかりと知り、使うタイミングなどを考えていかなければいけません。

※1「人権がない」というスラング…ゲームを進める上で有利になるアイテムを持っていないと、厳しい状況になります。それを「人権がない」と表現するのがゲーム業界などのスラングでした。今回はゲーム内のアイテムの話ではなく、実際の人間の身長の話をしている時に「人権がない」と使ったことで差別的な意味がついてくる発言となりました。

 

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 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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