ワーキングマザーを楽しもう 働く人が輝く社会に 波上こずみさん


ワーキングマザーを楽しもう 働く人が輝く社会に 波上こずみさん
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自身の経験から組織コンサルタントとして起業した波上ごずみさん

 「ワークライフバランス」「働き方改革」という言葉が浸透しつつある中、育児だけでなく、介護など男女問わず「家庭と仕事の両立」に悩む人は多い。2016年4月、沖縄では聞きなれない組織コンサルタントとして起業し、働く人の多様な生き方を尊重できる企業・組織づくりの啓発に取り組んでいるのがコズミックコンサルティング代表の波上こずみさん(41)。

 仕事をしながら育児や介護の両立に悩み、体調を崩した自身の経験が起業の原点。「ワーキングマザーを楽しもう」と働く女性や母親向けのセミナーも主宰し、好評だ。

 「子育てや介護をしている立場から世の中を見ることができるという“強み”に気付いてほしい」と語る波上さんに働き方を見直すヒントについて聞いた。
 

 

仕事と育児・介護問題に直面

―観光業界でのキャリアを経て自身の働き方を見直すきっかけは?

働きたいと思う人が力を発揮できる環境づくりを支援したいという

 「大学卒業後、東京で旅行会社に就職しました。2004年に地元に戻り、沖縄観光コンベンションビューローに入職し、海外プロモーションなどの誘致事業に関わりました。海外への出張なども多く、忙しい毎日でしたが、地元沖縄の観光をアピールする仕事にやりがいを感じていました。

結婚後も残業や出張を当たり前にこなしていました。08年に長男が誕生。仕事と育児との両立に関して最初は『どうにかなるだろう』とたかをくくっていたのですが、以前のような働き方は厳しかった。両親のサポートもありましたが、『もっと働きたい』『でも子どもも大事』。全部中途半端で、苦しかった。11年に第2子となる長女が誕生しました。そんな中、私の父親の体調が悪くなり、介護が必要になりました。育児に加え介護の問題に直面し、働き方を見直すきっかけになりました」

「復職後に、ビューロー内で初めて人材育成担当業務に携わることになりました。人材育成の勉強や異業種の方々との交流で『人を育てる』ことの重要さを実感しました。社内育成プログラムを構築する中で組織のビジョンや経営理念を軸にした人材育成の仕組みづくりについても学び、プログラムを作成し、講師として人材育成に取り組みました。

しかし、プライベートでは仕事と子育て、介護とのバランスをうまくとれず、子どもにつらく当たったりすることも。時短勤務なども活用しましたが、土日に出勤してこなすといった状況もあり心身共に疲れてきってしまい体調を崩してしまいました。家族からのアドバイスもあり、休職することに。ずっと走り続けてきて、休むことで自分の生き方を見直しました」

自身の経験を糧に

―組織コンサルタントとしての起業したのは。

「私自身の経験もあって、ワークライフバランスについて興味を持ちました。独学で勉強しながら東京での講座に通い、株式会社ワークライフバランス社認定のコンサルタントの資格を取得しました。

体調を崩していたのは心の病だったことも分かりました。イライラすることもなくなり、子どもたちと向き合う時間もできました。そんな中、育児や介護などで時間的制約があっても『働きたい』と思う人が力を発揮できる環境づくりをしたいと思いました。育児休業や介護制度などはどうしても女性のためのものという意識を変えることも必要だと感じました。

多様な人材を育て、活用できる組織づくり、働く人が生き生きとした組織づくりのお手伝いをしたいと考えました。私のモットーとして経営者や働く人に寄り添い、共につくるオーダーメード型の人材育成のプランニングを提案しています」

働き方を見直すことで子どもたちと向き合う時間や自分だけの時間を大切にできるように=那覇市の自宅

時間の使い方を見直すことから

―働く女性や母親向けのセミナーも開催していますね。

「私も出産前まではできていたことが、子どもが生まれてできなくなったストレスを抱えていました。中途半端と嘆いていたこともあります。ワークライフバランスについて学ぶことで私が気付いたこと、前向きな生き方をお伝えできればとセミナーをやってみることにしました。参加された方は前の私と同じようにネガティブで泣き出しそうな人も多い。でも皆と悩みを共有し、一人だけで抱え込まないことを伝えたいのです」

―働き方を見直すポイントとしてアドバイスは。

長男の響君(9歳)と長女凪ちゃん(6歳)と笑顔をみせる波上さん=那覇市の自宅

「仕事に対する取り組み方、1日の時間の使い方をリセットして、時間配分を見直すことから始めてほしいです。

自分の業務を一覧表にし、業務を見える化する、周囲を巻き込むといった仕事をスムーズに進めるための工夫も大事です。家事や育児とは別にわずかでも自分ために使うご褒美の時間を確保するのもポイントです。

母親の立場からの世の中を見ることができるのは貴重な経験。自然と身に付いた素晴らしいスキルを仕事に生かしてほしい。そんな思いを伝えたいと思っています」

 

(聞き手 石川理香)

~ プロフィル ~

 なみのうえ・こずみ 1976年 那覇市首里生まれ。県立首里高校卒業後、東京経済大学入学。3年次にオーストラリアへ留学。大学卒業後、2001年JTBワールド(在東京)に入社。04年帰県、沖縄観光コンベンションビューローに入職。誘致、受け入れ事業に携わる。05年に結婚、08年に長男、11年に長女を出産。復職後、同ビューロー初の組織内人事担当者として、人材育成プログラムを構築、社内講師も務めた。プライベートで父親の介護問題にも直面。16 年に沖縄観光コンベンションビューローを退職後、自身の経験を生かし株式会社ワークライフバランス社認定コンサルタントの資格を取得。同年4月に組織コンサルタントとして起業、現在に至る。