満月の海で見つけた〝夜の桜〟 しかたにさんちの自然暮らし(36)

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 明るい満月の光に包まれて、潮の引いた夜の海をひとり静かに歩いていると、昼間にはなかなか見られない生き物に出会うことがあります。日中は砂や穴の中に隠れていたり、海草にうまく紛れたりして暮らす彼らも、夜は外に出て餌を探し、ライトに驚いて葉陰から飛び出すこともあります。満月の夜に出会った生き物たちをご紹介します。


雲の影から、大きな月が出てきた。

砂地の小さな桜色  ツノヒメガザミ


ライトに照らされて、逃げる隙をうかがっているツノヒメガザミ。

 潮が引いた浅いイノーの砂地では、クリクリと大きな目をした、ピンクの小さなカニがこちらの様子を伺っています。ライトの光を警戒しているのかな。ちょっとかわいそうだけれど、光を当てるとじっと動かなくなるので、近くに寄ってじっくり観察してみましょう。ヒカンザクラの花びらのように濃いピンク色の、1センチほどのツノヒメガザミです。

 このカニのすごいところは、体の色を素早く変えられること。スポットライトを浴びて、見る見る白く変わります。よく見ると、甲羅から鋭く長いトゲが2本伸びて、結構かっこいい。一番後ろの脚は薄い団扇のようで、ライトの光を外すと、この脚を使って素早く泳いで逃げていきました。


葉陰の柿の種  ヒメイカ


 海草藻場を進むと、白い砂地の上に、柿の種のような茶色い影が浮かんでいます。海草の葉陰で暮らす、小さなヒメイカです。光に驚いて泳ぎ出したのでしょう。ライトを当てると、せわしなく水を吹き出して、時折小さなスミを残しながら、スイスイと逃げていきます。ひとしきり逃げると、海草の葉の下に入り、背中を葉っぱにくっつけて、ぶら下がったまま一休み。


潮溜まりを泳ぐヒメイカ。三角のヒレはとても小さい。

背中の粘着細胞で葉っぱにくっつき、腕を縮めて隠れたつもり?

 このイカの背中には、ネバネバを出す細胞があって、いろんな物にくっつくんです。これなら、小さな体でも、波に流されてしまうことはありませんね。


海藻のベッド アイゴの仲間

 12月にもなると、ホンダワラの仲間など、茶色い大型の海藻が伸び始めます。海藻の根元を探すと、葉に少し寄りかかって眠っている小魚が見つかりました。初夏、稚魚としてイノーにやってきたアイゴの仲間(エーグワァー)が、ここで藻を食べながら大きく育ったようです。


ホンダワラ類の根元で休む、アイゴの仲間。瞳が宝石のように美しい。

 魚にはまぶたがないので、眠っていても目は開けたまま。ライトの光で瞳はメタルグリーンに輝き、とてもきれいです。でも少し眩しかった様で、眠たそうにゆっくりと泳ぎ去って行きました。 みなさん、どうもお邪魔しました。

 昼間とはまた違った楽しさがある夜の海ですが、ライトが届く範囲しか見えないので、昼間以上に危険もあります。砂地の海底は、海が荒れる度に地形が変化します。昼間に何度も通い、地形をよく知っていた所ですが、夜は水中が見えづらく、砂の浅瀬に急に大きな深みができて怖い思いをしたことがあります。夜の海の観察は、海をよく知るガイドと一緒に、くれぐれも安全に気をつけて楽しんでくださいね。
 


月より明るい街の光が、雲を照らし出す。海岸道路が開通すれば、海への光害はさらに深刻になります。

鹿谷法一(しかたに自然案内)

 しかたに・のりかず 琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島生まれ。海に憧れて沖縄に来て、もう30年以上。専門は甲殻類。生物の形と機能の関係に興味がある。趣味は本とパソコンとバイクいじり。植物を育てるのも好き。

 




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