アムロ愛が止まらない 6月に那覇で「安室奈美恵を語る会」


この記事を書いた人 仲程 路恵

音楽ライターとして、音楽情報サイト「ビルボードジャパン.com」などで活躍している平賀哲雄(40)さんが6月、那覇市内で「安室奈美恵を語る会」を開催する。ファンと一緒に曲を聴きながら、それぞれの安室さんへの「愛」を語り合おうというイベントだ。平賀さんは、10代の頃にテレビで安室さんを見て一気にファンに。ライターとしてライブを取材し続けているほか、2005年には安室さん本人にインタビューも行った。「語る会」開催を前に沖縄を訪れた平賀さんに安室さんへの思いを聞いた。

◇聞き手・仲井間郁江(琉球新報Style編集部)

きっかけはツイッターの大合唱

昨年8月、NHKのラジオで安室ちゃんの特集番組があり、そこに解説者として出演しました。8時間、安室ちゃんの曲をかけ続ける番組。その時、ラジオの生放送と合わせてツイッターでも発信したんです。ラジオでは語りきれない部分をツイートしていたんです。

そしたら、例えば「Contrail」を流したらサビの「Life」って歌う部分ではツイッター上でも「ラーイ」って、次々とツイートがきて。文字なんだけど、「大合唱」の状態になって(笑)。すごく反応が良かった。ライブっぽくて。こういう感じのことをまたやりたいなって思い、今回「語る会」を企画しました。

ライブのようなトークイベントに

僕がイメージしているのは、普通の一方向のトークイベントではなくて、曲が流れたら大合唱が起きるみたいな。バラード聞いている時や話を聞いているときは、静かにじっと聞き入るっていう瞬間があっても良いけど、全体的なコンセプトは、トークイベントなのに、これライブなのかな?!みたいな。あのNHKのラジオ番組で起きたようなことをライブハウスという規模感でできないかと。

引退発表以降、ファンのみんなは、しゃべりたいことやぶつけられない思いがたくさんあると思う。同じ空間で安室奈美恵という存在を通じてつながっていたいという思いが、引退発表以降より強くなった感じがするんです。寂しくない人なんて一人もいないでしょうから。

 沖縄は安室ちゃんが生まれた場所。今後、東京など他の場所でも「語る会」を開催するかどうかはわからないですけど、沖縄でやるのが一番、必然的かなと思っています。

ファンからのスタート

僕はそもそも安室ちゃんのファンだった。スーパーモンキーズの頃、たまたまテレビで見て、同じ年齢の子だって知って以来ずっとファン。ライターとして記事を書かせてもらえる立場になり、2005年には本人にインタビューをさせてもらえる機会にも恵まれましたけど、根本はファンです。10代の頃は「俺将来、安室ちゃんと結婚する」って言っていました(苦笑)。

同い歳ということもあり、彼女の存在にずっと背中を押され続けてきました。同じ時代を40年間生きてきた。彼女の歌を自分の年齢と照らし合わせながら聞いて「そうそう、そういう歳だよね」って思うこともあるし、逆に「この歳でそれ歌うか」っていう、かっこよさも感じながら今まできました。

世代を超え、アジアまで。支持される理由

安室ちゃんは「かっこいい曲やファッションはどうあるべきか」ということは100も200も考えていると思うけど、「皆に好かれるためにどうすれば」っていう軸では動いていないと思う。多くの人に支持される理由はそこかなって思う。あと、結果が出るまで信念を曲げずにやり続け、何度も全盛期を生み出した姿勢。そのスタンスがものすごく、アスリート的でクリエイター的。

90年代の小室哲哉さんプロデュースによる全盛期を終え、2000年代に第2の全盛期を迎えるまでの間、安室ちゃんは一切折れなかった。一時期セールスが落ちました、ってなったら当然、「安室さん、あの頃(90年代)みたいな歌を歌ってくださいよ」という声はあったはず。でもそんなことはほとんどせず、自分の追求する音楽を、世間に受け入れられる流れになるまでやり続けた。こういうことは、音楽の世界だけじゃなくて、スポーツやエンタメなどあらゆる世界でもなかなか無いことだと思う。

一人一人が人生重ね

彼女の歌の魅力のひとつに、聞き手がそれぞれの状況やライフステージで聞き、いろいろな受け止め方ができる点がある。それは、彼女がライブでMC(演奏の間の話)をしないとか、テレビに出なくなったとか、安室奈美恵自身が自分の作品や自分のことについて語らなくなったことによる産物だとも思う。音楽は本来、そうであって良い。

誰もが知るポップスターになってしまうと、プライベートな部分の情報もあっちこっちから出てきちゃう。それによって歌の意味合いがネガティブな方向に評価されたりすることが多々あるのがこのエンターテイメントの世界。でもそこを、語らないできたからこそ、聞き手がいろいろなイマジネーションを働かせて作品を楽しむことができる。それが彼女の歌のおもしろさ。もっと言えば、聞き手が自分の人生と重ねられる。「安室ちゃんはこういう思いで歌っているんだろうな。私もそうなんだよな。だからこの曲が好き」ってなれる。

 

アムロスの乗り越え方!?

アムロス(引退後の喪失感)は乗り越えなくていい(笑)。僕も彼女の最後のステージを見届けた後は放心状態になると思います。2018年9月16日の夜は今まで味わったことのない感覚で過ごすと思う。

多くの人が、過去の大失恋以上のダメージを負うと思います(苦笑)。だって25年ですから。ずっと心の支えにしてきた人が引退してしまうのだから、ロス状態にならないわけがない。思う存分悲しんで、泣いていい。

でも、引退するその瞬間までは、安室ちゃんが安心して引退できるようにしたい。彼女がステージを去ったその瞬間からは、ファンもみんな泣き崩れていい。よくやった自分、よく笑顔で見送った!と。そしてその夜はみんなで飲もう。

無理して忘れようなんて思わなくて良い。なぜなら、安室ちゃんの歌の中に必ずあなたが前に進もうって思わせるメッセージがいくらでもある。安室奈美恵は引退したけれど、曲を聞いている中でまた結局、安室奈美恵に背中を押されて、前に進もうって思うはずだから。

イベント案内

 「安室奈美恵を語る会」は6月29日(金)、那覇市のライブハウス「Output」で開催。午後7時開場、7時半開演。チケットは1500円。プレイガイド(ローソン)やイープラスで販売中。

平賀哲雄(ひらが てつお) 日本の音楽ライター、編集者、司会者、インタビュアー。

1999年に音楽情報WEBサイト「hotexpress」を立ち上げ、2012年より「Billboard JAPAN.com」で活動。小室哲哉、中島美嘉、大塚愛、Do As Infinity、モーニング娘。、BiS、SuGなど様々なアーティストのイベント司会も担当。2005年には安室奈美恵にもインタビューした。

聞き手 仲井間郁江(なかいま・いくえ)

2006年琉球新報社入社。編集局経済部、東京報道部、社会部、政治部などを経て、4月から経営戦略局で琉球新報Style編集などを担当。口を開けば「安室愛」を語る日々。好きな色は「金」。