沖縄県警察に潜入(?)してみた。→日々鍛錬に脱帽した。 「てみた。」37

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365日、24時間、県民の平穏な暮らしを担う沖縄県警。交番勤務の「お巡りさん」をはじめとして、さまざまな職場で警察官が働いている。

一体どれほどの訓練を重ね、業務に励んでいるのか―。犯人を追い詰める技術とは? 興味を持った県警記者クラブに勤務する4人の記者が県警へ潜入(?)してみた。

運動不足の記者が無謀にも過酷な訓練に挑戦。通常は公開されていない職場にも足を踏み入れた。




機動隊訓練


限界を超えろ!
助け待つ人のために

「本気で声を出しているのか。最初からやり直せ」。県警警備部機動隊の「レンジャー隊」の訓練開始そうそう、指導官から怒声が飛んだ。機動隊員の服と靴を身に着け、特別入隊したとうま記者ときんら記者。映画で見た過酷な軍隊の訓練が頭をよぎり、冷や汗がにじんだ。

レンジャー隊は「広域緊急援助隊」の通称で、災害現場で人命救助など過酷な任務に当たる。「レンジャーとうま」と「レンジャーきんら」で呼ばれるにわかレンジャーは、新隊員に交じって訓練に加わった。


ロープ渡橋訓練でバランスを取るきんら記者

2人が挑んだのは12メートルの高さから地上へ降りる降下訓練。レンジャーとうまは足がすくむ。平行に張られた約15メートルのロープを渡る渡橋訓練で、レンジャーきんらはバランスが取れない。2人とも指導官の「指導」で、片膝でしゃがむ状態からジャンプを繰り返すペナルティーを受けた。

「これから何があるのか…」。緊張感が恐怖心に変わった2人を待っていたのは、腕立て伏せなどの体力調整と終わりの見えないレンジャー走。何度も心が折れそうになったが、新隊員や指導官から「ファイト」と声を掛けられ、何とか力を振り絞り訓練終了。


降下訓練でおそるおそる降りるとうま記者

体力の限界っ!!

小隊長の國仲秀樹さん(37)は「自分で限界をつくらず、肉体だけでなく精神を鍛える訓練でもある。助けを待っている人のために頑張っている」と胸を張る。県民の生命・財産を守るため、日々鍛錬する姿が光って見えた。

一方で「記者が来るということで、訓練はフルメニューではない」と笑う國仲小隊長に、レンジャーとうまは気が遠くなった。レンジャーきんらは訓練終了後、気分が悪くなり、トイレに駆け込んだのは、ここだけの話…。



柔剣道稽古


犯人を抑えろ!
始業前から100%の力


勤務が始まる前の午前8時。県警本部地下にある武道場では柔剣道の早朝稽古が行われている。警察官は武道や逮捕術の習得が必須だ。運動不足の記者が屈強な警察官らに交じって柔道の稽古に参加した。

緊張している記者の前に現れたのは柔道や空手の有段者である生活安全部長の崎原永克さん。上着を脱いだ姿で「見せようね。57歳の体を」と話し、空手の「三戦(サンチン)」を披露した。体の節々で筋肉が隆起し、とても50代後半とは思えない。


寝技をかけられて苦渋の表情を見せるうめだ記者

記者らも県警首席術科師範の上江洲智明さん(59)の指導の下、受け身や寝技、打ち込み、乱取りをした。寝技では上江洲さんに抵抗を試みても一瞬で抑え込まれる。「何が何だか…」と戸惑うばかりだった。

このようにハードな稽古は勤務に影響はないのか。上江洲師範は「勤務前に稽古をすることで、仕事は100%の力がすぐに出せる。警察官は被疑者に向かっていくためにも体力や精神力を鍛えないといけない」と力強く話した。

就業開始30分前の午前9時前には稽古は終わり、警察官らは涼しい顔で道場を後にした。


白バイ隊


交通安全を守れ!
力ではなく技磨く


スピード違反などを取り締まり、日々交通安全を守る役目を担う「白バイ隊」。街の中で見掛けるだけでなく、テレビをつければマラソンや駅伝でランナーを先導する姿が映し出される。警察組織の中でも何かと目立つ存在だ。

そんな白バイ隊が普段どんな訓練をしているのか―さぞかし華麗な訓練をしているのかと思いきや、全くそんなことはなかった…。きらびやかな見た目とは裏腹に、地味だが、しかしとてもハードな訓練がそこには待っていた。


倒れたバイクを起こそうとする、すなかわ記者

入隊から数日間はエンジンをかけての訓練をせずに、まずは「引き回し」という白バイ(250キロ以上)をひたすら押し続ける訓練に励む。ほかにも、倒れた白バイを起こす訓練もあり、まるで筋トレのようだ。

記者の私も体験してみたが、無論簡単にできるはずもなく「引き回し」ではバランスを崩し、あえなく倒す失態をさらしてしまった。

県警交通機動隊の宮城理副隊長いわく「(必要なのは)パワーではなく技術」とのことで、女性隊員がいとも簡単に白バイを持ち上げていたのには驚いた。


鑑識


痕跡を全て採取せよ!
現場保存に心砕く


犯行現場に残された被疑者の指紋や足跡などを採取する刑事部鑑識課。指紋採取で使用するのは人の皮脂などに反応する「石松子」という粉とウサギの毛でできたダスターハケ、指紋採取転写シートの3つの道具だ。盗難車両に見立てた車のドアノブ付近にダスターハケを使って円を描くように石松子をかけていく。


車のドアノブ部分に石松子をかけて指紋を採取する鑑識課員

しばらくすると車体からは指紋が浮かび上がり、透明なシートを貼り付けて採取する。シートは鑑識課の鑑定係が分析し、容疑者の特定を進める。

鑑識現場で重要なのは、いかに犯行現場を保存し、証拠を採取するかだ。捜査員の痕跡で現場環境を変えてしまわないよう、鑑識課員は真夏の現場でも長袖長ズボン、マスクに帽子、足には靴をカバーで覆って作業に当たる。

機動鑑識隊第3係長の東當正智さん(52)は「過酷な現場でも『本当にこれで十分か』と自問自答しながら捜査に臨んでいる。被疑者の痕跡は絶対に逃さない」と力を込める。

自宅で妻のお菓子を何度も盗み食いするとうま記者。東當さんの手に掛かったら、たちまち証拠を押さえられそうだ。



科捜研


見えないものを見る
証拠を見逃すな!

きんら記者とすなかわ記者が次に訪れたのは、県警本部にある刑事部の科学捜査研究所(科捜研)だ。

暗闇の中、白衣の研究員が血の付いた布に液体を吹き掛けると血痕が光った。硬貨に付いた小さなゴミを電子顕微鏡で調べる。テレビの刑事ドラマに出てくるような最新技術を駆使する研究員の働きぶりに、2人はすっかり興奮気味。

科捜研には4つの分野がある。DNA型鑑定を進める「法医」、血液の違法薬物などを調べる「化学」、偽造通貨や筆跡などを鑑定する「人文」、交通事故で速度などを解析する「物理」だ。


塗りつぶしたはずの文字が出てきて驚くきんら記者

人文分野で筆跡鑑定を見せてもらった。インクに光の波長を当てると塗りつぶされた文字が現れた。真っ白のノートに静電気を当てて黒いトナーを振ると、上のページの筆圧痕で文字が浮かび上がった。

「物的証拠で被疑者の特定につながれば『やったぜ』となる」と、やりがいを語る研究員。肉眼では見えないものを見えるようにする専門家集団の熱意に感動しつつ、「悪いことはできないなあ」とおののく2人だった。


交通管制センター


渋滞を防げ!
信号2100基を調整


縦約4.5メートル、横8メートルの巨大なスクリーンに県内の主要幹線道路の交通状況や交差点の映像がリアルタイムで映し出される。ここは県警本部7階の交通管制センター。県内約2100基の信号機を管理する。ラジオでおなじみの渋滞情報もここから発信される。県内の交通事故防止や渋滞緩和などを担う。


各地の交通状態が分かる交通管制センターのスクリーン

各道路に設置される感知器からセンターへ交通情報が送られている。渋滞が発生すると、システムが自動で信号機の点灯時間を調整する。

管理運用係長の警部補・津嘉山至さんは「信号機を設置すると車の流れが悪くなる。渋滞を緩和するためセンターで管理している」と説明する。沖縄県は道路100キロ当たりの信号機数が全国6位の29.7基で、一時的な渋滞が慢性化している。「信号機をなくした方が交通がスムーズになる場所があれば、各署へ提案をしてほしい」と呼び掛けた。


(2018年4月29日 琉球新報掲載)




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