内容や場所を変え、何度でも繰り返される同じデマ。 モバプリの知っ得![57]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

昨年10月に沖縄で広がったデマが、今度は長崎県大村市で広がりました。

以下、広がったデマの文章です。

“友達から回って来ました。

大村在住の友人からの情報です(警察の顔文字)

知らない人が路上で接近して来て、乾燥海産物をすすめて来て販売しようとしながら『一回味見をして』とか『臭いを嗅いで』とか言われても、絶対絶対しないでください。

海産物ではなく(エチルエーテル)1種類の麻酔薬で、臭いを嗅いだら意識を失う。

中国から来た新しい犯罪。

周囲へ広く知らせてください。

実際、事件発生、臓器売買してるそうです。特に、友達や親戚に是非伝えてください。”

昨年沖縄で広がったデマとは文章に多少変化があるものの、「乾燥海産物で気絶させられて」「臓器売買される」「中国から来た犯罪」など、ショッキングな文章内容は変わっていません。

念のため大村警察署に確認をしたところ、このような事案は確認されていないとのこと。

この「乾燥海産物デマ」は2010年頃に韓国で出回ったものです。
こうしたデマは地域・時間をまたぎながら、絶えず繰り返されてしまいます。

今回も、信じていないけれど「気をつけるに越した事は無いから」という理由で広めた人も多いかと思います。
しかしながら、不確かな情報を広める事は、怪しいとされる人たちに対する偏見を助長し、危険な目にあわせたり名誉を毀損することになります。

さらには、こうしたデマが災害時に広がることで、救助や復興が遅れたり、誰かの命を直接的に奪うことになりかねません。
普段から冷静な判断をし不確かな情報を広げない力を養う。こうした心構えが大事です。

問題は「民族差別」を助長すること

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

デマを広げてはいけない理由の1つに、「怪しまれた人が危険な目にあう」ということが挙げられます。

今回のデマの中には「中国から来た新しい犯罪である」とした言葉が入っていました。
何気ない言葉ですが、こうしたデマが広がることで「中国人に気をつけよう」というような偏見が植え付けられる可能性があります。

(この怖さにピンと来ない方は、自分が外国に行って「日本人は野蛮な民族だ」とデマが広がることを置き換えてみてください)

デマを広げた人のほとんどは、差別意識はなかったと思います。単純に「拉致されたら怖いな」という気持ちが先行したと思います。
しかしながらこうしたデマが、何度も何度も出回ることで特定の人たちのイメージが悪くなり、最終的には差別を生むキッカケになります。

世の中はグローバル化が進み、日本に外国の方が住むことも、日本人が外国に住むことも増えてきました。悲しいことに、各国で異なる民族でのトラブルが報じられ、難しい問題になっていると感じます。
こうした問題は、絡まった紐をなおすように、丁寧に丁寧に進めていかないといけません。
しかしながら、こうしたデマが広がることで偏見を生み、絡まった紐をより絡めることになり、前に進まなくなるのです。

こうした人種差別につながるデマは、インターネットが普及する前から存在していました。

古くから、「忽然と客の消えるブティック」などの都市伝説があります。
これは、ブティックで試着ルームに入った若い女性が消え、人身売買されるという都市伝説です。

この「人身売買をする悪い人たち」は時期・地域によって、様々な人たちに改変され、差別を偏見しています。

デマに引っかからないために

こうしたデマに引っかからないためにはどうしたら良いでしょうか。

まずは警察や公的機関の発表、あるいはそれを受けて作られた報道を待つことです。
個人の投稿では、その人が噂として聞いた話なのか、面白く作り上げた話なのか判断が難しいため、間違ってデマを広げる可能性も広がります。

また、デマに対して「免疫」をつけることも効果的です。

デマは多少の形が変われど、共通する「型」が存在します。
そのため、様々なデマ・都市伝説を「間違った情報」と認識することで、
新しく発生するデマに対しての免疫ができるのです。

これは、インフルエンザを予防するためのワクチンのようなものです。
あらかじめ体内にウィルスを取り込んで撃退し、身体に覚えさせることで感染を防ぐ。

デマも、普段からしっかりとデマとしてとらえ、体内(脳内)に入れておく。そうすることで、災害などの緊急時に適切な対応が取れるでしょう。

先月、沖縄を中心にはしかの感染が広がりました。
これも、全ての世代でしっかりと免疫があれば広がらなかったと思いますが、ある年代の予防接種が不足していて、感染が拡大しました。

デマもほとんどの人たちに免疫があれば拡散しません。
しかしながら、注意を怠る人が増えることで、爆発的に拡散します。

誰でも自由に書き込み、発信できるようになった時代なので、デマや噂の発生をゼロにすることはできません。

しかしながら、私たち一人一人の意識で拡散を抑えることは可能です。
そのため情報をしっかりと調べながらも、デマが発生した時にはそのパターンを頭に入れておいて、免疫をつける力が求められています。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」6月3日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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