トラブルの元になる動画を投稿しない、拡散しない! モバプリの知っ得![88]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

東京都内の高校で撮影された、とある動画がSNSで拡散されて大きな話題となっています。

その動画では、廊下で生徒と先生が言い争いをしており、最後に先生が生徒を殴るシーンが撮影されていました。その動画はネットの世界を飛び越え、地上波テレビのワイドショーでも報じられ、「理由があれば、体罰は止むを得ないか」などの体罰論争へとつながりました。

それと同時に、ネット上では動画に関連した生徒たちの個人情報がまとめられ、晒される「私刑」へと発展しています。

トラブル動画を投稿しない

問題となった動画は1分ほどの短い動画です。動画が投稿された当初は殴った先生に対する非難もありましたが、拡散されていく中で「先生をわざと怒らせ、ネットに投稿して炎上を狙ったものだった」とした情報が入り、逆に生徒たちが非難されることになりました。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

殴られた生徒、撮影していた生徒の顔写真と名前などの個人情報がネット上で拡散。
「こんな大人をナメたクソ生徒を許すな」と言った意見とともに、多くの罵詈雑言も並んでいます。

今回の動画をネットに投稿した生徒も、ここまで大ごとになるとは想像していなかったと思います。ましてや「生徒側」がバッシングされるのは完全に想定外だったと思います。

スマートフォンを使えば、トラブルや事件の動画を撮影し、SNSで投稿することで「告発動画」を簡単に発信できるようになりました。誰でもニュースレポーターになれる反面、ネットの世界で拡散されると、その「反応」を自分でコントロールすることは不可能となります。

今回のようにネットに個人情報を晒されることで、生徒たちはこれから先の就職活動や、下手すると結婚の時にまで、悪い影響を与えることが考えられます。

「スマホで撮影された動画がキッカケで世の中が動く」など、告発としての成功例もありますが、不確定な要素が強い上にリスクがとても高いため、子供たちに対しては絶対に行わないように伝えましょう。また大人のスマホユーザーも、そのリスクを十分に考え、慎重な行動が求められます。

トラブル動画を拡散しない

法律に触れるような行為が行われた場合、警察が動き、司法が判断し慎重に「刑」を決めます。それにも関わらず、「俺たちが裁くんだ!」と、勝手に制裁を加えることを「私刑(しけい)」と呼びます。私刑は英語にすると「リンチ」になりますので、ネット上の私刑をネットリンチとも呼びます。

今回の暴力動画の件で、生徒たちの個人情報を拡散したり、強い言葉で中傷することはれっきとした私刑です。「許せない!」などの感情を抱くことは否定しませんが、ネットで見ている私たちに私刑を執行する権限はありません。

私刑が当たり前の社会になると、いつしか自分自身や、自分の大切な人たちも私刑の餌食になり、社会的に「殺される」可能性があります。

ネット上で拡散される動画は、不確かで、曖昧な部分が多いにも関わらず、人々の怒りの感情によってどんどんと拡散されます。この過程の中でデマが発生し、無関係の人まで私刑の対象になると言った例もあります。

今回の動画は「生意気な生徒に対する暴力は仕方ない」という意見も、ともに拡散されました。こうした「理由があれば殴ってもいい」という考え方は、「理由があればネットで個人情報を拡散してもいい」という私刑の考えに結びつきます。

こうしたトラブル動画をネット上で見かけた場合は、拡散しない。そして問題点を冷静に分析し、自分の周りでは発生しないか照らしあわせる。

さらには「どこまでが事実」かを確認し、「勇み足で拡散したメディア・ユーザーは誰だったか」までを確認し、情報を見極められる人かどうかの判断した方がいいでしょう。
 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」2月3日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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