「デジタルウェルビーイング(幸せなデジタル生活)」機能を使う モバプリの知っ得![91]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

iPhoneの日本発売は2008年、Androidスマートフォンの日本発売は2009年。今年でそれぞれ11年・10年が経ちます。スマートフォン、アプリ、ネットワークは大幅に進化し、私たちの生活も大きく変化しました。

その間、スマートフォンメーカー・アプリ開発者・携帯電話会社は「ユーザーにどれだけ長い時間スマートフォンを使わせるか」ということを追求してきました。皆がスマートフォンを使う時間が増えると、買い替えの頻度が高まるのでスマートフォンメーカーは儲かりますし、ユーザーがアプリに課金をすることで、アプリ開発者とアプリストアを運営するAppleやGoogleにお金が入ります。さらに、スマートフォンで多く通信をすると、携帯電話会社は通信料金で稼ぐことができます。

画面が大きくなり一度に見ることができる情報も増え、バッテリーも大容量になっているため長時間使うことができるようになってきました。

そうした結果、私たちのスマートフォンの利用時間は伸び続けています。総務省の調査によると、10代の2012年の1日のスマホ利用は75.7分でしたが2016年には108.2分になっています。

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111310.html

また、20代では2012年の1日のスマホ利用は73.2分でしたが2016年には124.8分と10代以上に利用時間が伸びています。

そうした中、スマホを使い続けることによる「疲れ」も指摘されています。イギリス・英王立公衆衛生協会の調査によると、写真投稿サイト「Instagram」は他のSNS以上に不安感や孤独感などの否定的な影響が高かったとの結果が出ています。

「若者の心の健康に最悪」なSNSはインスタグラム=英調査
https://www.bbc.com/japanese/39972594

確かに、自分が落ち込んでいる時や気持ちに余裕のない時に、楽しそうな投稿を見ると「みんな楽しそうなのに自分だけ辛い…」と、気持ちが落ち込んだことある人は多いと思います。

こうした現状から、GoogleやApple、さらにはアプリ開発者まで「スマホと適度な距離をとって楽しむ」よう、パラダイムシフト(転換)が起きています。

デジタルウェルビーイング=幸せなデジタル生活を

「スマートフォンを長く使わせる」方向を目指していた業界でしたが、長く使っても利用者が幸せにならないことに気がつき、適度な距離感で楽しめるように様々な機能を設けるようになっています。

例えば、iPhoneでは2018年に配信されたiOS12より「スクリーンタイム」という機能を提供しています。
スクリーンタイムでは、その日にiPhoneを利用した「時間」や「お知らせの回数」などを数字で可視化することが可能です。また保護者がスクリーンタイムを設定し、子どもの利用時間の設定や使用内訳などの確認も可能になっています。

一方のGoogleも、2018年より配信を開始したAndorid 9以降は利用時間を確認できる「デジタルウェルビーイング」機能を提供。一部機種でしか利用できませんが、iPhoneと同じように使うことができます。

Googleのデジタルウェルビーイング機能でユニークなものは、指定した時間になると画面が「モノクロ」表示になる設定です。
私もこの機能を使っていますが、モノクロの画面ではInstagramなどの画像・動画系SNSを見ても全く面白みがなく、「スマホ置くか…」といった気分になります。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

そのほか、iPhone・Androidスマートフォンともに、指定の時間になるとお知らせをオフにする「おやすみモード」や、画面のブルーライトをカットする設定なども用意されているので、組み合わせてスマートフォンの適度な利用時間を作れるようにするといいでしょう。

Androidスマホの機能名にもなっている「デジタルウェルビーイング」は日本語にすると「幸せなデジタル生活を」といった意味になります。若者に人気のアプリ「TikTok」においても、その名の通り、利用時間を制限するデジタルウェルビーイング機能が設けられています。

スマートフォンも、アプリも、私たちの生活を豊かにするための道具であり、その道具に振り回されて不幸になるのは本末転倒です。

これからは「デジタルウェルビーイング」を意識しながら、自分なりの適切な使い方を見つけていきたいです。
 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」2月10日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/