沖縄郵便の歴史を知れる施設!?【島ネタCHOSA班】


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先日、那覇中央郵便局に足を運んだ時、2階に「沖縄郵政資料センター」という施設があることに気が付いたので、立ち寄ってみました。沖縄の郵便の歴史が分かり、また琉球切手など貴重な資料もたくさんあり、勉強になりました。皆さんにもこの施設をぜひ知ってほしいので、島ネタCHOSA班でも紹介してください。

(那覇市 ジョー・ネンガ)

那覇中央郵便局

那覇中央郵便局には何度か足を運んだことがあるものの、「沖縄郵政資料センター」には気が付かなかった調査員。まったくもって不覚です!

沖縄郵政資料センター

というわけで、気合いを入れ直して調査に臨むことにした調査員。さっそく、壺川の那覇中央郵便局へ。

2階に上がると税関があるのですが、その隣(北側)が沖縄郵政資料センター。開館時間は平日の10~16 時まで。予約なしで、無料で見学が可能です(団体は要予約)。

調査員を出迎えてくれたのは、センター長の金城功(いさお)さん。金城さんに案内していただきながら、順路に沿って展示を見ていきましょう。

まず驚かされたのは、琉球王国時代の通信事情の紹介から展示がスタートしていること。うーん、スケールが大きい!船が近づくと、火と煙で合図を伝える「のろし」を上げて、島から島へと伝えていた様子などが、ジオラマの映像を交えて楽しく学べます。ジオラマは子どもたちにも人気だとのこと。

続いて、近代郵便制度が始まった明治時代の展示。「本土では前島密が近代郵便制度を広めましたが、沖縄では、真中忠直(まなか・ただなお)が最後の琉球国王・尚泰王の協力のもと、郵便制度を広げていきました」と金城さん。真中忠直は「沖縄の郵便の父」と言われる人物なので、ぜひとも覚えておきたいところ。

苦難の歴史映す展示

沖縄郵政資料センターのパンフレット

ここまでが展示スペースの半分で、残り半分は戦後の事情について。焼け跡の中から再スタートした郵政事業の復興の歴史を振り返ります。

調査員の目に入ってきたのが、赤いポスト。ちょっと小ぶりで、不思議な形をしています。「これは、米軍が廃棄したアセチレンガスのボンベを利用した代用ポストです。戦争で郵便局舎やポストなど全てが破壊され活用できなくなり、あるもので工夫して作ったわけですね」。なるほど、先人の苦難と知恵がうかがえます。

そのほかの見どころは、戦後の郵便業務の復興期に発行された「久米島切手」。米軍がザラ紙にガリ版刷りで印刷し、局長が一枚ずつ押印した久米島切手は、130シート発行され、そのうち144枚しか利用されなかったそう。なかでも、「エンタイア」(実際に投函され、消印が押された切手)は世界にここだけ、1通しか現存しないという大変貴重な資料です。

展示を締めくくるのは、米軍統治下の27年間に、248種が発行された琉球切手。代表的な切手をパネルで展示するほか、248種のうち、現在収集されている切手の一覧も展示されています。

「琉球切手は1966年ごろにブームが頂点に達し、郵便局には多くのマニアが押し寄せました。投機対象ともなり、最終切手となった72年4月20日の切手趣味週間(ユシビン)の発売には、約2万人が琉球郵政庁のある那覇東郵便局に集まり、レッカー車や警察も動員する大混乱になったんです」と、金城さんは興味深いエピソードを紹介してくれました。

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「琉球王国から始まり、明治、そして戦後に至るまでの沖縄郵政の貴重な資料が一堂に展示されている施設は、他にはありません」と金城さん。

「展示物を通し、先人が歩んできた苦難の歴史を記憶にとどめてもらいたいですね」と話してくれました。

折しも12月は年賀状シーズン。投函ついでに那覇中央郵便局に足を延ばし、施設を見学してみてかいかがでしょうか。


〈見学のご案内〉

那覇市壺川3-3-8 那覇中央郵便局2階
開館時間:10~16時
休館日:土曜・日曜・祝日および毎年12月29日~1月3日
電話:098-854-0255
入場無料

(2022年12月8日 週刊レキオ掲載)