同じ場所で撮影したタイムスリップ写真から変貌を読み取る。
レンズを通して見る街並みや建造物は、当時の生活や世相を映す鏡。現代にも息づく街の魅力とパワーを再発見しよう。
意外なことに那覇市街から古都首里へと登っていく主要な道路は、県道29号の1本だけ。そう言う意味でも、首里城は守りにも優れた造りだったことが想像できます。ただし、それがまた交通渋滞の元凶でもあるというのは、那覇市としてもつらい所かもしれません。
そんなわけで首里へと登る基本のコースは、琉球王朝の昔からさほど変わってはいないものですが、繰り返された道路拡幅工事で見た目は大きく変化してきました。
しかし、この通りの中で一カ所だけ復帰前からそれほど変わらない道路があります。それは県道29号の中ほどにある松川交差点辺りに入り口のある一方通行の道で、その出口は坂を下り切った所で再び県道29号に合流しています。実はこの道こそ、王朝時代から続く街道の名残だそうで、言われてみれば大きくカーブする県道をショートカットするように最短コースをつないでいて、歩きであればこっちのほうが便利な気がします。
実は大きくカーブした現在の県道は、戦前に鉄軌道のために造られた道ということもあって、大まわりしている分だけ傾斜が楽になっていたので戦後の自動車道路に都合が良かったのかもしれません。と言うことで、今回のテーマは45年前に撮影された旧道の画像です。県道沿いに建っている山里外科の屋上から撮影されたものです。
このコーナーの趣旨は、昔と現在の風景を比較して、変化を楽しむことなのですが、旧道となったこの道は、周辺の家が大きく立派になったこと以外は、まるで時が止まったように大きな変化はありません。旧道となることで、新たな開発などからいったん忘れられ、タイムカプセルのように昔の面影を伝え続けているのが印象的です。
ランドマークとしての建築は消えて行くものですが、旧道を眺めていると、また違った歴史が、よりリアルに浮かび上がってくるように思え、味わい深いものが感じられるのではないでしょうか。
執筆:真喜屋 勉(まきや つとむ)
沖縄県那覇生まれの映画監督であり、沖縄の市井の人々が撮影した8ミリ映画の収集家。沖縄アーカイブ研究所というブログで、8ミリ映画の配信も行っている。
https://okinawa-archives-labo.com/