感謝しながら、自分をアップデート! デビュー20周年 知念だしんいちろう


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目標は、脱・お笑いコンプレックス
 

お笑い芸人としてデビュー、2022年12月に20周年を迎えた知念だしんいちろうさん。舞台に立つだけではなくメディアでMCを担当したり、脚本や演出を手掛けたりと幅広く活躍中だ。そしていろいろなキャラクターの演じ分けも、しんいちろうさんならではの魅力。ユタキャラ・大兼(おおがね)のぞみさん(左)、シンガーソングライター・長谷川海子(はせがわ・かいじ)さん(右)にも表紙に登場してもらった。=那覇市 FECオフィス内バサナイスタジオ 写真・村山望

2002年12月に「演芸集団FEC」に入団。以降さまざまな活動を続けている、人気芸人・知念だしんいちろうさん。意外なことにデビュー当時から現在も、お笑いに対してコンプレックスを持ち続けているという。「これからは自信をつけたい!」と目標を掲げる彼に、人前で初めてコントを披露した学生時代のことや20年の芸歴を振り返ってもらいながら、思い出や展望、20周年記念ライブについて聞いた。

ピン芸人として、そしてユタの大兼のぞみをはじめとするキャラクターで、時には「すぱるたいんづ」のコンビネタで、私たちを笑わせる知念だしんいちろうさん。お笑いの道への第一歩は中学2年生の時の修学旅行。同級生のヨーガリーまさきさんと、コントを演じたことだという。

相方のヨーガリーまさきさんと中学時代に「すぱるたいんづ」を結成(写真は2019年)

「お笑いを続けたくて、高校生のころオリジン・コーポレーションの練習生だった時期もあります。でも稽古が厳しくて舞台にも立てず、正式入所はしませんでした。同期だったこきざみインディアンは、僕が抜けた後すぐに売れっ子になったんですよ。FECも見学しましたが、ここではできないと思いました。だって練習していたのはお笑いではなく、バスケットボールでしたから(笑)」

沖縄を離れ本土に出て芸人を目指そうと思ったしんいちろうさんは、高校卒業後まさきさんと共に東京へ。だがアルバイト中心の生活になったため、一年半後には沖縄に戻る。

「楽しい東京生活でしたが芸人から遠ざかると思い帰りました」

その後しばらく那覇市内でお笑いライブを主催したが、費用がかさみ借金状態に。負担が大きくなったので開催を止め、まさきさんと一緒にFECに入団しコンビ「すぱるたいんづ」を継続。すぐに舞台に立つチャンスがあったことが、入団の決め手になったという。

ユタキャラは母の影響

入団した2002年当時FECの先輩コンビは2組で、すぱるたいんづはライブに出演し、レギュラー番組を3本持つなど多忙だったという。だが収入は少なく給料は数千円。

「ロケに時間が取られ、テレビに出るから売れているねと周りに言われてつらかったです。お笑いの舞台は月に1~2回で、ウケると最高の気分。その時にもらう笑いのありがたみで生きている感覚でした(笑)」としんいちろうさん。お金に困り弟の知念臣悟さん他、身近な人に迷惑をかけたこともあったそうだ。

2013年は事務所の仲間、ゴリラコーポレーションとライブ「ゴリラだしんいちろう」を毎月開催した

「お笑いに全力を注ぐため、バイトはしないと決めていました。器用な方ではなく能力も高くないので、時間をかけないとできないタイプなんです。無駄なことはないと思い、来る仕事は全てやってきました」と語る。イベント出演などが増えたと実感したのは芸歴10年を超えたころだという。仕事としてお笑いを続けていく覚悟があったからこそ、苦しい時期を乗り越え現在の活躍につながったといえそうだ。

また「大兼のぞみ」というキャラクターの誕生も大きな転機になった。2011年、コンビ活動を休止し一人で活動することになった時、実際にユタである母親を参考に演じるようになったという。今や沖縄県のCMやイベントに出演するなどの人気者となり、独特の存在感を放つ存在だ。

「ユタとして信頼されてきたんでしょうね(笑)。護得久栄昇先生とシングル曲『タンナファクルー節』でメジャーデビューし、おいしいことばかりです」

先月発表した同曲は音をデコレーションしたポップでおしゃれな曲調と、大兼のぞみのノーマルな歌声が聞きどころだそうだ。

自信を付け居場所をつくりたい

20周年を迎えた今、これまで笑ってくれた人に感謝し、自分を好きだと言ってくれる人が喜ぶ事をやっていきたいと考えているしんいちろうさん。目標は、

FECライブに出演したこきざみインディアン・さーねーさんと(2003年)

「今までは広いところに向けたお笑いをやってきました。過去を振り返って洗い直し、自分を更新したいです。目の前にマイクやカメラがあるだけで楽しい。自分のことをお笑いコンプレックス芸人だと思っていて、面白い人たちの隣にいるためにはどうするか、何をすればいいのかと常に意識しています。自分に自信を付けて居場所をつくり、沖縄のお笑いが次のステージに上がれるように前進していきたいですね」

28日のライブはネタあり音楽ありゲストありで、盛りだくさんに開催する。20年前に見ていた人も、初めて見る人も楽しめる内容になりそうだ。

(饒波貴子)


知念だしんいちろうデビュー20周年ライブ『UP DATE(アップデート)』

開催日:12月28日(水)
時間:開場17時30分/開演18時
会場:テンブスホール(那覇市ぶんかテンブス館4階)
チケット:前売り当日共に1500円(小学生以下半額、未就学児膝上無料)

予約・問い合わせ:FECオフィス
TEL 098-869-9505

※最新情報はTwitter @chinendookinawa

(2022年12月15日付 週刊レキオ掲載)