紅型をベビーグッズや日傘に!?【島ネタCHOSA班】


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私は浦添在住ですが、前田に「びんがた」と大きく書かれているお店があります。よくお客さんが出入りするので、気になっています。どんなお店か見てきてくれないでしょうか。

(浦添市・よっちゃん)

紅型で作られた日傘

「城(ぐすく)紅型染工房」のことですね~。では、お店に潜入調査してみましょう!

と、その前に…。「紅型(びんがた)」について、ちょっとおさらいします。紅型とは、沖縄の伝統文化を伝える染色技法で、沖縄の伝統工芸の一つ。紅型の衣裳(いしょう)は、琉球王府時代には国王や高級士族層、舞踊の衣裳としてのみ着用が許されていました。

暮らしになじむ商品群

店長の山城信吾さん。紅型の蝶ネクタイにも注目

2月初旬―。開店直後の時間に、店長の山城信吾さんとデザイナーの吉濱愛さんがお出迎えしてくれました。

お店の1階は「ギャラリー(店舗)」で、2階が紅型染めの見学や体験ができる「工房」。ギャラリーには本格的な紅型パネルから、紅型を用いたベビーグッズ、スマホケース、蝶ネクタイ、日傘、(本の)しおり、イヤリングなど約80~100もの商品が並びます。

中には赤ちゃんの命名紙(紅型タペストリー)や日傘も。まるで生活全てを紅型で彩ることができるのでは、と思うぐらい豊富な紅型のレパートリーに、調査員はびっくり!

デザイナーの吉濱愛さん

デザイナーの吉濱さんは「自分が欲しいもの、あげたいものを制作しているんです(笑)。紅型は敷居が高いと思う人が多いと思うので、暮らしの中になじむオリジナル作品をたくさん作っています」と話します。

紅型で沖縄を伝える

初節句祝いの贈り物にぴったり、兜をあしらったカラフルなオリジナル紅型を制作中の吉濱さん

城紅型染工房は、吉濱さんの母・玉城政子さんが1971年に創業。紅型を家業とする一家に生まれ育った吉濱さんは、幼い頃から紅型と一緒に育ち、何の違和感もなく紅型の門を叩きました。

首里高等学校染織デザイン科を卒業後、いったん沖縄を離れて京都芸術短期大学染織テキスタイルコースに入学。本土の四季折々の自然を見るうち、自分があまり感じたことがなかった沖縄の四季がより鮮明に見えてきて、「紅型で沖縄の自然や文化を伝えていきたい」と思うように。

2000年九州・沖縄サミット開催記念「OKINAWAテキスタイルデザインコンテスト2000」でゴールド賞を受賞し、サミット外務省スタッフウエアに採用。「第1回かりゆしデザインコンペ」では審査員特別賞を受賞。

沖縄を描くために、時には沖縄の自然の中に自らの身をおき、青空をあおぎ、風を感じ、カヌーをこいでは鳥のさえずりを聞くという吉濱さん。「紅型は沖縄で生まれた伝統工芸なので、紅型を通して沖縄の季節や自然、文化を伝えていきたい。商売だから、自分の表現の折り合いをつけるのが難しい時もありますが、(私は)休日がいらないほど紅型の制作が大好き。これからも、生活に身近な紅型作品を作りながら、若手の育成など沖縄の紅型業界の発展に少しでも貢献していけたら」と話します。

紅型染め体験完成品(見本品)

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店長の山城さんは、吉濱さんの姉で同店企画・デザイン担当の山城祥子さんの夫。祥子さんと結婚後、店長に就任。前職でのサラリーマン営業職10年の経験を生かし、市場・ターゲットを絞るなど工夫を重ね、紅型商品を考案。店の商品を卸と通販商品に限定したり、インバウンドやWeb発信を強化したりしました。「発信しないと伝わらない。紅型は決して安いものではないからこそ、人との温かいつながりを自ら感じていきたい。より紅型の認知と向上につなげていきたいですね」と笑顔で話します。

調査員は今回、初めて紅型染め体験をしましたが、絵の具とはまた違った色の入れ方(染め方)や温水でのりを溶かすなど、やること全てが初体験。沖縄で生まれ育った者こそ意外と沖縄のものに触れていないかも!?


城紅型染工房

浦添市前田4-9-1(セブンイレブン浦添前田店向かい)

問い合わせ TEL 098-887-3414

(2023年3月9日 週刊レキオ掲載)