国道の街路樹に集まる鳥の正体は!?【島ネタCHOSA班】


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最近、浦添市内を通る交通量の多い国道の、とある街路樹に、夕方から夜、びっくりするぐらい多数の小鳥が群がっています。何の鳥か気になるので、調べてもらえますか?

(浦添市 M・I)

依頼者から送られてきた動画(3月中旬撮影)を見ると…特定の街路樹の周りを飛び回る白い小鳥が写っていました。小鳥たちは、街路樹から飛び立ったり、舞い戻ったり…。驚いたのはその数。ぱっと見ただけでも数十羽以上いるのが分かります。全体では何羽いるのか分かりませんが、相当な数であることは確か。

スマホで撮った動画だけでは種類の特定ができないため、生き物に詳しいレキオのカメラマンが現場を見に行ったところ、種類は「ハクセキレイ」と判明!

現場は、県内でも屈指の交通量の国道沿い。周囲にはビルが立ち並び、夜は照明に明るく照らされています。なぜこんな街中に集合しているのでしょうか?

調査員は、野鳥の専門家である鳥獣保護管理員の糸数多寿子さんにお話を聞くことにしました。

浦添市内の国道の街路樹に集まったハクセキレイ=3月中旬

鳥の名はハクセキレイ

「ハクセキレイは、県内で11~3月に見られる渡り鳥です」と糸数さん。

野鳥には、1年中同じ地域で暮らす「留鳥(りゅうちょう)」と季節によって生活する地域を変える「渡り鳥」の2種類がいますが、ハクセキレイは、秋に北方から渡ってきて越冬、春に再び北上する冬鳥なのだそう。

農道上を歩くハクセキレイ(撮影・村山望)

さらに詳しくハクセキレイのプロフィルを教えてもらうと…。スズメ上科に属するセキレイ科で、体長は21㌢ほどと小ぶり。頭から背は黒く、腹と翼は白、細身で尾羽が長いのが特徴です。英語の名称は「ワグ・テイル」。その名の通り、尾羽(=テイル)をふる(=ワグ)習性もあるとのことで、何だかかわいいですね。

「飛ぶのは上手で、アクロバティックな動きをします。空中の一点に止まるような『ホバリング』もできますよ」

このハクセキレイ、小さな体ながら、なんと、繁殖地である本州(東日本全域)、北海道、さらには中国大陸北部やロシアまで移動することもあるというからビックリ!

「県内では、冬場の日中、広場の芝生や、学校のグラウンドなど、外敵を察知しやすい開けた場所によく姿を見せます。水路や田んぼ、防波堤など水辺でも多く見られますね」

昼間は1、2羽で単独行動し、11~3月の冬場に、前述のような場所の地上で、1、2羽でいる白い鳥を見かけたら、ハクセキレイであることが多いそうです。

集団ねぐらを作る理由は?

糸数多寿子さん(沖縄環境経済研究所)

県民にとって身近な小鳥であることが分かったハクセキレイ。ただし、今回のように、街路樹を集団でねぐらにしている姿が見られるのは、沖縄では珍しいと糸数さん。

「本土では、ハクセキレイが集団ねぐらを作る事例が知られていますが、沖縄では聞いたことがないですね」

ふーむ、そうなのですね。

「都市部の人通りの多い街路樹に集まっている理由は、カラスやタカ類、ネコなどの天敵に襲われにくい環境であるためと思われます」

渡ってきてから、冬場ずっとこの場所で集団ねぐらをしているのか、北上する渡りの季節が近づいたためここに集まっているかは現時点では不明(渡りはある程度集団で行う)だそう。興味深いですね。*

この記事が掲載される今ごろは、もうハクセキレイは本州や大陸に向け北上しているかもしれません。

街路樹の小鳥に、地球規模のドラマを感じた調査員。「沖縄の街中にも、スズメやメジロだけではなく、いろいろな鳥が飛来してきているので、注意してみてください」と糸数さん。皆さんも、身近な鳥に注目すると、意外な発見があるかもしれませんよ!


(2023年4月6日 週刊レキオ掲載)