泡盛のもろみ粕を使ったフランスパン!?【島ネタCHOSA班】


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恩納村にあるパン屋さんが泡盛のもろみを使ったパンを販売してるという話を聞きました。泡盛もパンも大好きなのですごく気になります!島ネタCHOSA班さん、調査お願いします。

(豊見城市 パンスキー)

調べると、おんなの駅なかゆくい市場内にあるパン屋さん「acicoco」(以下アチココ)の「萬座バゲット」というフランスパンだと判明しました。もろみ粕とはお酒を蒸留し終えた液状の残りのこと。特に、泡盛から副次的に生成されるものは「泡盛粕」とも呼ばれます。泡盛のもろみ粕を使ったパンってどんな味なんでしょうか? パンじょーぐーの調査員はさっそく恩納村へ向かいました。

地域資源を生かしたパン

大城英樹さん

調査員を迎え入れてくれたのは、アチココの大城英樹さん。

糸満市出身の大城さんは、パン職人歴25年。高校卒業を機に県外で10年近く修業し、2007年に沖縄に戻りパン屋をオープン。その後、2017年に株式会社ONNAが経営するパン屋アチココで働き始めました。

萬座バゲット開発のきっかけとなったのは2020年。コロナ禍で客足が減少し、アチココ休業期間中に、同村内にある泡盛酒造所・恩納酒造所の佐渡山社長から「泡盛を造る過程で出てくる『もろみ粕』を使って何かできないか」という相談を受けたことがきっかけだった、と大城さんは話します。

もろみ酢の原料としても知られている泡盛のもろみ粕は、その栄養価の高さから、豚などの家畜飼料にも使われています。しかし、そのほとんどは産業廃棄物としてお金を払って捨てているのが現状でした。

新商品開発を任された大城さんは、もろみ粕を味見したときに「発酵した匂いと酸味を生かせるのはフランスパンしかないと直感的に思った」と言います。

「ただ、フランスパンは他のパンとは違って、卵や砂糖を使わないシンプルなパンなので、もろみ粕の割合や、そのときの気温がダイレクトに味や膨らみに影響するんです。もろみ粕と生地のバランスを考えるのがものすごい大変でした」

試行錯誤を繰り返し、一カ月半。完成したフランスパンは、恩納酒造所の泡盛の銘柄から「萬座バゲット」と名付けられました。

アチココは、萬座バゲットの完成をきっかけに営業を再開。地域資源を生かした新商品として、萬座バゲットを大々的に売り出しました。

萬座バゲット。毎日およそ80本を焼いているそう

新しい県産品に

食べてみると、外はカリッと、中はもちもちとした食感。ほどよい酸味と芳醇(ほうじゅん)な香りが特徴的で、クセになりますよ!

「どんな料理にも合うのですが、特に肉料理との相性は抜群。泡盛などのお酒のつまみとして購入される方も多いですよ。オーブンで軽く焼くだけでも香りやうまみが増してオススメです。その上にチーズを載せてみたり、ちょっと塩をかけてみたり……。オリーブオイルをかけるだけでもおいしいですよ」と大城さん。

萬座バゲットはアチココの営業再開と同時期に恩納村内のホテルへの卸売もスタート。開発者である大城さん自らホテルに足を運び、商品説明をしていたといいます。その甲斐もあって、現在は恩納村内にある3つのホテルに卸しています。

「卸だけでも、月1000本近く出ています。だんだんと旅行客が戻りつつある今、恩納村の地産地消に力を入れていきたいというホテルからの反応も良いですね」と大城さんはうれしそうに話します。

食べごろサイズの「萬座プチ」も人気

萬座バゲットの味にほれ込んだホテルの宿泊客がお店にも来ることも。中にはネット販売を通して、県外から定期的に萬座バゲットを購入する熱心なファンもいるとのこと。

2021年に、萬座バゲットは地域資源を活用した特産品として全国的に認められ、全国商工会連合「2021年度バイヤーズルーム」において全国商工会連合会賞を受賞しました。

今後の展望について大城さんに聞くと「新しい県産品として、萬座バゲットを県内のホテルにより多く広めていくのが目標です。また、県外の方や、気軽に足を運べない方のためにネット販売にも力を入れていきたい」と話してくれました。

泡盛のもろみ粕から作られたフランスパンは、地域資源を生かした環境に優しい新たな県産品でした。


Acicoco(アチココ)

国頭郡恩納村仲泊1656-9

おんなの駅 なかゆくい市場内

11:00~17:00

TEL 098-964-1188

(おんなの駅 なかゆくい市場)

(2023年4月13日 週刊レキオ掲載)