北中城村に点在する川柳ポスト!?【島ネタCHOSA班】


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先日、北中城村の中村家住宅に行った時、川柳ポストというものを見つけました。シーサー型のポストで、村内数カ所に置いてあるそうです。気になるので、ぜひ調べてください。

(宜野湾市 大江センリュー)

川柳ポストですか。しかもシーサー型とはユニークです。調べると、北中城村の川柳句会「北中城三水会」が設置したと判明しました。4月から「レキオ川柳・レキオ琉歌」の連載を開始した週刊レキオとしては調査せねば! ということで、「北中城三水会」の花崎為継会長と世話役の新垣秀昭さんに会いに行ってきました。

村内6カ所に設置

シーサーポストが設置してあるという中村家住宅で2人と合流。中村家住宅のお土産品店前にはシーサーの形をした「川柳ポスト」が置いてあります。調査員がポストをまじまじと見ていると、「(シーサーの)口から投函して、背中から取り出すことができる」と新垣さんが仕組みを説明してくれました。楽しく投句ができそうです!

川柳ポストを始めた三水会は北中城村文化協会に所属している人たちが2013年に発足した川柳句会で、現在9人が所属しています。

「毎月第3水曜日に集まって川柳を披露し、批評し合って楽しむ句会で、愉快な仲間が集まっている」と笑顔を見せる花崎さん。「全国でも珍しく、夜に酒を飲みながら句会をやっている」と新垣さんも続けます。コロナ禍の3年間はメールで句会を開いていたそうですが、川柳をさかなに楽しんでいる様子が伝わってきます。

「北中城三水会」の花崎為継会長(右)と世話役の新垣秀昭さん(左)

「川柳の里」を目指して

そんな愉快なメンバーがそろう三水会が2016年から展開しているのが北中城村の村民提案制度を活用した「川柳の里づくり」事業。川柳を沖縄で広めたいという思いがきっかけとなりました。花崎さんは「沖縄の人はとってもユーモア精神がある。それなのに川柳が普及せず、『川柳不毛の地』といわれている。沖縄こそが川柳王国にふさわしい」と普及への意欲を見せます。

そこで三水会は北中城村を川柳の里にしようとシーサー型ポストの設置・運営の他、シンポジウムを開催してきました。川柳ポストは助成を得て、村内の6人の陶芸家に依頼し作ってもらったそうです。中村家住宅の他、あやかりの杜、イオンモール沖縄ライカム、北中城村役場など村内6カ所に置いてあり、それぞれ作風の違うポストになっています。

中村家住宅にある川柳ポスト。横には投句用紙が置いてあります

ポストには県内外から毎年200句以上が投句され、3月下旬にはその中から天賞、地賞、人賞と五客、合わせて8句が入賞句として選出されます。

「入賞作品の表彰式と園遊会が国指定重要文化財の中村家住宅の中庭で行われる」と新垣さん。同住宅の協力により、伝統的な場所で表彰式が実現できているそう。入賞者には表彰状や副賞の陶芸作品が授与されます。また、表彰式の後は入賞者を囲んで”園遊会“と称するささやかな祝賀会を開いているそうです。

これら8句の入賞作品は展示もされるといい、「陶板に焼き付けた一枚一枚の句を中村家住宅通りの壁面に貼付して、半永久的に鑑賞していただく」と花崎さん。壁面には初年度からの作品がずらりと並んでいます。ずっと残り続けているなんてすごい栄誉ですね。

入賞作品は、中村家住宅通りの壁面に陶板で展示されます

「川柳はユーモアや皮肉だけではなく、人間の喜怒哀楽も詠むのが魅力。約束事といえば五・七・五ぐらい」と花崎さん。新垣さんも「五・七・五を並べて推敲(すいこう)して、表現をめぐらす。脳トレや認知症予防にも最適。北中城を散策しながら、川柳を投句してほしい」と呼びかけています。

「北中城に来て一句ひねってほしい。川柳ポストがあなたの投稿を口を開けて待っています」と花崎さん。誰でも自由に投句できる川柳ポスト。思い思いの句を気軽に投稿してみては。


(2023年6月1日 週刊レキオ掲載)