音楽でつなぐ沖縄とアメリカ
音楽仲間の紹介で出会ったデビッドさんとメリーさん。沖縄に移住して30年を超えたデビッドさんと、アメリカやブラジルでの生活経験があるメリーさんは、国際的な感覚を持つミュージシャンという共通点で引き寄せられたのだろう。お互いの音楽性とキャラクターに興味を持ち、正式に活動を始めたという2人。ユニット名「沖縄アメリカーナ」のネーミングの由来は特に印象的だ。
両親がプレゼントしたロックバンド「エアロスミス」のアルバムを小学生のころに聞き、音楽が好きになったというデビッドさん。高校生まではドラムを叩いていたが、大学生になりギタリストに転向。卒業後の1992年に旅行で訪れた沖縄が気に入り、移住を決めたという。
「沖縄、日本、アメリカ。いろんな文化が混在している沖縄のチャンプルー精神が大好きです」と話すデビッドさんは、住み始めた当時、宜野湾市のライブハウスに毎晩のように通い、集まるミュージシャンたちとセッション。キャリアを積み、ブルース・ミュージシャンとして正式に活動をスタートさせた。99年にはエリック・クラプトンやジョージ・ハリスンらのプロデューサーとして知られる、デラニー・ブラムレットが手掛けたアルバム「Nail It Down」を発表。「緊張しながらのレコーディングでしたが大変名誉な事でした」と振り返る。
ソロ活動を続けながら他のミュージシャンとも共演する中で、メリーさんに出会う。
「2014年に知人のピンチヒッターとして共演したのが初対面でした。でも実はその7年前から名前は知っていたんです。紹介すると数人が言ってくれましたが実現せず、やっと会えたんです」と笑顔で語るメリーさん。すぐに意気投合し、声を掛け合ってイベント出演を重ね、15年にはライブツアーでカンボジアを回ったそうだ。
元アメリカ兵との出会い
活動初期は「メリー&デビッド」と名乗ってイベントに出演していた2人に16年、大きな出来事が起こる。
「観光スポットになっているアメリカのとある骨董品店で演奏した時の事です。つえをついたおじいちゃんが笑顔で聴いてくれ、終演後に拍手をして近付いて来ました。『1945年に私は沖縄にいました』と彼は話し、『アメリカと沖縄の音楽をミックスした曲が聞けるなんて幸せだ』と言ってくれました」とデビッドさん。
「地元のオジーやオバーの戦争体験談は聞いていましたが、アメリカ兵だった方に会うのは初めてでした。沖縄戦という暗い過去を心にしまっていたおじいちゃんを、少しでも救えたら。音楽を通して今の沖縄を感じてもらえたのではないか、と思いました」とメリーさんは語る。
90歳を超えていたというその老人は、家庭では一度も戦争体験を話す事がなかったそうで、沖縄を懐かしむ姿に触れた家族は驚いたそうだ。
「この方のおかげで、僕たち2人の音楽活動の目的、方向性がはっきり分かりました」(デビッドさん)
「沖縄とアメリカにはそれぞれの歴史がありますが、音楽を通して新たなつながりを感じる活動をしていきたいと思いました」(メリーさん)
2人の思いをくみ取り、当時のプロデューサーがユニット名を「沖縄アメリカーナにしよう」と提案したそうだ。
沖縄の魅力を伝えるために
音楽は人の心のドアを開くツールになると信じ、県内やアメリカ、他国の刑務所や病院、養護施設などの慰問を続けるデビッドさんとメリーさん。「救いになれば」という思いと「応援している」というメッセージを届けるために、今後も訪ねていくという。
「音楽を通してたくさんの友達ができました。来年は結成10周年を迎えますので沖縄側とアメリカ側、両方の友達が楽しめるエンターテインメントづくりを計画したいです。ライブを開いて、みんなで盛り上がりたいですね」(メリーさん)「もっといろんな場所に行き、音楽を通して沖縄の魅力を伝えたい。海外でブルースは知られていても、沖縄の音楽はあまり知られていない現実があります。知ってもらえるように努力して、国や人種の壁を超えてみんながつながるといいなと思っています」(デビッドさん)
沖縄アメリカーナは今日も世界のどこかに、2人らしい音楽を届けているだろう。
(饒波貴子)
「福州園」開園記念ライブに出演
『SHIMA ROCK CAFE LIVE 2023』
日時:9月2日(土)17時開演
会場:福州園(那覇市久米)
出演:ディアマンテス、ラコルド、沖縄アメリカーナ
鑑賞料:無料
(入園料 昼200円/夜300円は必要)
問い合わせ:TEL 098-943-6078
※最新情報はHP・SNSでチェック
https://okinawaamericana.com
https://instagram.com/okinawaamericana
(2023年8月31日付 週刊レキオ掲載)