サンフランシスコの街角 「驚かれない」にビックリ!【レインボーハート】


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今からちょうど5年前、私はアメリカのサンフランシスコに住んでいました。

当時はアメリカ人の彼氏がいて、2人暮らしをしていました。彼が急に体調を崩し、関係を維持できなくなり、私は日本に帰ってきましたが、結婚を約束したほどの真剣な付き合いでした。

サンフランシスコは人口の約25%がLGBTと言われ、同性同士が手をつないだりしている風景は街中どこでも見られる普通の光景でした。

私も彼と街で手をつないだり、ハグをしたり、軽くキスをしたりすることもありましたが、誰も見向きもしなかったのを覚えています。おそらく同じことを沖縄で、例えば国道58号線で行えば、運転している人たちはびっくりだと思いますが、サンフランシスコではそれを見て驚く人の方が逆に周りに驚かれるような、そんな社会だったのです。

ある時、彼氏とけんかになり、男女のカップルではあまりないと思うのですが、取っ組み合いのけんかになり(笑)、肩を痛めてカイロプラクティックを受診したことがあります。

初診の際はどうして肩を痛めたのか、ドクターに説明しなければいけません。私は壁にぶつけたとか、取り繕った説明をしようかと思ったのですが、試しに全部正直に言ってみたのです。

サンフランシスコでは同性同士のカップルは街中どこにでもいました

「同居している彼氏とけんかになり、ヒートアップして取っ組み合いになり、肩を痛めました」と。

すると、メモを取りながら話を聞いていたアメリカ人ドクターは全く驚くこともなく、いわゆる「スルー」で、「はい、肩を見せて」と。周りにいた助手の方たちも誰一人として驚かないのです。

施術をしながら、ある助手の方は「彼氏はどこで仕事しているの?」とか「クリスマスはどうするの?」と聞いてきます。「彼は○○レストランのマネジャーだよ。クリスマスは彼の実家の家族とみんなでパーティーなんだ」と答えると「いいねー、楽しんでね!」と返してきて、男女のカップルと扱いが全く変わらないのでした。

日本では周りから驚かれたり変な目で見られたりすることすらある同性カップルです。同じ地球上でこれほどまでに捉え方が違う社会が存在することに、本当にびっくりでした。

サンフランシスコ生活を通じて、私はLGBTへの捉え方は何か世界共通のものがあるわけではなく、社会や環境によって大きく左右されるものだと実感しました。ということは、この日本でもいつかサンフランシスコのように、同性同士で手をつないでいても全く驚かれない時代が来る可能性もあるのだと思っています。

(2019年5月28日 琉球新報掲載)

 竹内清文(たけうち・きよふみ) 岡山県津山市出身、沖縄県在住。レインボーハートプロジェクトokinawa代表。LGBTをテーマに学校講演会を数多く行う。