恋愛や性で悩む若者たち【レインボーハート】


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「生まれて初めて人に話せました」と高校生の彼は私の前で号泣しました。

ある高校での講演会終了後、友達と一緒に個別相談にやってきたその生徒は「友情は分かるんですが、恋愛って分からないんです」と話してくれました。

親戚の集まりでは「高校生なのに彼女いないのか?」と聞かれ、親戚のおじさんの散髪屋に行けば、「お前はオカマか?」(オカマは一般的に差別語とされています)と言われ、どう答えていいか分からなくなってしまったそう。

「こんな時、自分は何と答えたらいいのでしょうか?」と尋ねてきました。

「あなたは自然に恋愛感情が出てこないだけで、選んでそうなっているわけじゃないでしょ? あなたは何も悪くないんだよ」と言うと、彼はせきを切ったようにワンワン泣き始めたのでした。

体育館での講演会後、個別に相談に来る生徒はたくさんいます。

以前、友達に相談しようとしたこともあったけれど、急に言葉が出なくなり、部屋を飛び出したこともあったそう。彼の隣で話を聞いていた友達も、まさか彼がこんなに悩んでいるとは気付かなかったと言っていました。「相談できて本当によかったです、ありがとうございました」と相談を終えた彼はとてもうれしそうでした。

別の高校では「性行為をしたいと思わないから、性欲増強ドリンクを何本も買って飲んでみたが効果がなかった。自分はおかしいですか?」と真剣に相談してきた男子生徒もいました。周りから「性行為したいと思わないなんておかしい」と言われたこともあったそうです。

特に思春期の頃は、周りが恋愛や性の話で盛り上がっているのに自分だけ話についていけないと不安になってしまうのでしょう。

これまでの連載でも書きましたが、私は子どもたちに心から「周りと違っても大丈夫」と伝えています。

そもそも、恋愛感情や性欲は、出そうと思って出すものではないと思います。

私はゲイですが「男を好きになろう!」と決意したことなど一度もなく(笑)、気付いたらたまたま男の人が好きで、性欲の対象が男の人だっただけです。相談してきた彼らも選んでそうなっているわけではないと思います。たまたまそうなっただけなのに、周りから変と言われ、変えようとしても変えられず、悩み傷ついていました。

人には傷つきやすく繊細な部分があります。特に恋愛や性に関することは不安になりやすく、人からの何気ない言葉に傷ついたりします。

本当のやさしさって何でしょう。違いを大切に、その人らしさを温かく見守る、そんな人が増えてほしいなと思います。

(2019年7月30日 琉球新報掲載)

 竹内清文(たけうち・きよふみ) 岡山県津山市出身、沖縄県在住。レインボーハートプロジェクトokinawa代表。LGBTをテーマに学校講演会を数多く行う。