「リツイート」も同罪? モバプリの知っ得[158]


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東京地裁は先月30日、虚偽内容のイラスト※1でジャーナリストの伊藤詩織さんの名誉を傷つけたとして、イラストを描いた女性、そしてイラストの投稿をTwitterでリツイートした男性2人に対しても損害賠償の支払いを命じました。リツイートはTwitterの転送機能で「拡散」と言い換えることもできます。名誉を傷つける誹謗中傷の投稿を直接行わなくても、拡散を行うことで同じように責任を問われるということです。

今回の件では、「伊藤詩織さんが枕営業をしている」というイラストを描き込まれ、拡散されたことがきっかけとして起こった裁判です。イラストを書いた女性は「風刺画として、フィクションとして書いた」とあらかじめ予防線を張っていましたが、裁判の中で、「虚偽の事実を述べる人物であるという印象を与える」として名誉棄損を認め、賠償を命じました。また今回の裁判では、イラスト投稿をリツイートした他の2人に対しても賠償が命じられています。リツイートを行うことで、「自身の発言」として認められ、投稿者と同じように責任が伴うことになります。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

ネットのデマによって長い間誹謗中傷の被害を受けている、お笑い芸人のスマイリーキクチさんは、手軽にできるリツイートについても責任が問われる様子を「借金の連帯保証人」と表現しています。お願いされて軽い気持ちで借金の連帯保証人になったら、自分の所に借金の取り立てが来た。同じように、軽い気持ちで誹謗中傷の投稿を拡散したら、自分が裁判で訴えられるということですね。SNSをはじめ、日本では「表現の自由」が保障されています。しかしそれは「責任を問われない自由」ではありません。リツイートも表現になりますので、改めて責任感を持って行う必要があります。

SNSのプロフィールなどに、「リツイートやいいね欄は、必ずしも賛同しているわけではありません」といった注意書きを書いている人もいますが、それで万が一今回のような事件に巻き込まれても、責任がゼロになるわけではありません。このあたりも含めて「どういう予防線を張るか」ではなく、賛同しないのであれば引用リツイートで自分の意見を書き込むといって方法で、意志を明確に発信する方がいいでしょう。

今後法改正で、匿名で書き込んだ人の特定がしやすくなる予定です。それによって名誉毀損や侮辱の裁判の数もどんどん増えてくるでしょう。同じ言葉でもタイミングが変われば人を追い詰めることもあります。どこまでが「批判」と「誹謗中傷」の境目なのか、言葉は常に考えて使わないと人を傷つけてしまうことになります。自分自身のSNSの使い方や言葉遣いが誰かを傷つけていないか、見直してみてください。

※1 虚偽内容のイラスト…伊藤詩織さんは、当時テレビ局に勤務していた男性にお酒を飲まされて性暴力を受けたと告白をしました。問題のイラストは、その性暴力の告白が「うそ」であるかのように描かれていました。イラストを描いた女性は「実在の人物とは関係ありません」と注意書きをしていたものの、ほとんどの人が伊藤さんだと分かった上で誹謗中傷を重ねていたため、その言い訳は認められませんでした。

 

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 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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