TikTok運営会社がステマ行為 問題点を振り返る モバプリの知っ得[165]


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ショート動画アプリ「TikTok」の運営会社の日本法人は、先月25日にTwitterのインフルエンサー20名にお金を払って投稿を依頼しながら、本来必要な「#PR」などの広告表記を行なっていなかったとして謝罪しました。これは以前から問題になっている「ステマ※1」と呼ばれる行為です。本来、TikTok側はステマを厳しく取り締まるべき立場です。今回はそんな立場に置かれている企業がステマを行なっていたため、通常のステマよりも重く受けとらえるべきです。

例えば、何か物を買う前にネットやSNS、動画アプリなどに投稿されているさまざまな人の感想・口コミ・レビューを参考にしている人も多いのではないでしょうか。しかし、それがお金のやり取りがあった「広告」だったとしたら、お金を受け取っているので商品に対して本心でなく過剰に良いように書いたり、悪く書いたりする人も出てきます。ステマが横行する社会になると、私たちは何を信じていいのか分からなくなります。

ステルスマーケティングと呼ばれる行為は、法律に反しているわけではありません。あくまで広告業界の「自主ルール」のようなもので、広告が絡んだ投稿をする際は「#PR」「CMです」といった表記をするようにしています。

昔からステマ行為はいろんな企業が行っていますが、今回の件は前例と大きく違います。多くの人が日常的に使っているSNSというプラットフォームを運営しているTikTokは、本来そういったSNSを使ったステマを取り締まるべき立場にいるのに、Twitterという他社SNSを使ってステマ行為を行っていたという点です。さらに読売新聞の報道によると、インフルエンサーにステマ行為をお願いする際に、担当者は偽名を使い所属元も偽っていたとのことです。

似たような話だと、去年フジテレビのアナウンサーが美容室で無料サービスを受ける代わりに、店のSNSに自身の写真を掲載させて店を紹介するような投稿をしていました。また先月には公共のメディアとうたっていた「Choose Life Project」が、実は立ち上げ当初、政党の立憲民主党から1000万円を超えるお金を受け取っていたことも明らかになりました。これも、お金のやり取りを隠して「公共メディア」をうたっていたことが、ステマではないかと批判されました。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

これら法律に触れている行為ではありませんが、一般的な企業やSNSインフルエンサーよりも、本来はステマに対して厳しい目を向けなきゃいけないメディア側がやっていたというのは、ステマ問題は思っているよりも根深い問題になっています。内部告発、DMが流出しない限りは、外から確実にステマを見分ける方法はありません。同じように、ステマを防ぐ方法もほとんどありません。(自分がインフルエンサーとなった時にステマの依頼を断ることはできますが…)

ステマが横行すると、情報を疑いながら全て細かくチェックするという消費者側のコストだけが上がっていきます。情報を疑って慎重に判断する姿勢は大事ですが、ただただ疑い深い状況になっている中を過ごすわけにもいきません。ステマが発覚した時に批判し、ステマにノーという態度を表明し、「ステマは割りに合わない、リスクが高い」と広告主とインフルエンサーに思わせないとダメということですね。改めて皆さんが見ているSNSやインフルエンサーの周辺でステマが発生していないか、注意深くチェックしてみましょう

※1 ステマ…ステルスマーケティングの略でステマと呼びます。日本語に訳すと「隠れた広告」になります。「#PR」「#広告」などのタグをつけて広告とわかるようにしないといけません。ステマにならないよう意識している人気YouTuberなどはあわせて「企業案件です」などと動画内でも触れ、広告としっかり分かるよう徹底している人もいます。

 

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 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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