Yahoo! JAPANがヨーロッパで使えなくなる? モバプリの知っ得[166]


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Yahoo! JAPANは1日、ヤフーメールなど一部を除くサービスを、イギリスと欧州経済領域(EEA)で4月6日以降利用できなくなることを発表しました。Yahoo! JAPANはサービスを停止する理由を明言していませんが、ヨーロッパの個人情報を保護する法律「一般データ保護規則(GDPR)」に対応しきれないからだと考えられています。

GDPRはユーザーの個人情報やデータの取り扱いが厳しく定められている法律で、違反した場合は企業の世界全体の年間売上の最高4%を上限に罰金を命じることができます。昨年の夏には、アマゾンがGDPRに違反していたとして970億円の罰金が課せられました。Yahoo! JAPANは現段階でGDPRに反しているわけではありませんが、今後リスクが発生する恐れがあることから、おそらく今回撤退を決めたのでしょう。

「個人情報」と聞くと名前や住所、クレジットカード情報などをイメージするかもしれませんが、現在はそれらに加えてネット通販での購入履歴、位置情報なども個人情報に含まれるようになっています。私たちが手にしている、スマートフォンは個人情報の塊ということですね。さらに私たちがネットで何を検索したのか、どんなアカウントに「いいね」しているのか、こうしたデータを大量に分析することで、IT企業は私たちの頭の中を除くことができ、場合によっては誘導することもできます。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

SNSやWebサービスは多くの場合無料で使うことができますが、それは企業がボランティアで提供しているわけではなく、私たちの個人情報やデータを収集・分析し、それらをマーケティングや広告に使うことで成り立っています。そうしたサービスが広がるにつれ、企業がデータを集めて強くなりすぎてユーザーの権利を侵害している恐れが出てきました。Yahoo! JAPANもこうしたビジネスモデルのため、今後はヨーロッパの厳しい法律に対応できなくなるリスクを感じたのかもしれません。アメリカでも、Facebook・Instagramを運営するメタ社の個人情報・データの取り扱いについて批判が集まっています。

アメリカやヨーロッパがこうした個人情報の取り扱いについて敏感になっているのに対して、日本ではまだそこまで盛り上がっていません。こうした話はスケールが大きすぎてイメージしにくいかもしれませんが、私たちが毎日長時間触れるSNSやWebサービスの形を決定づける大事な動きです。SNSアプリがどのように売上をあげているのか、なぜこの広告が出るのかをじっくり考えてもいいのかもしれません。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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