気づかぬうちに使いすぎていない? 適切なスマホとの距離のはかり方 モバプリの知っ得![58]


この記事を書いた人 稲嶺 盛裕

スマートフォンの代表機種、iPhoneの登場から10年が経ちました。
(アメリカでは2007年、日本では2008年に発売開始)
その後ライバルのAndroidスマートフォン(日本では2009年)も登場し、従来の「携帯電話」のシェアをどんどん奪いました。

スマートフォンの誕生は私たちの生活を便利にする一方で、使い過ぎてしまう「依存症」の問題も深刻化しています。

偉そうに書いている私も、1日10時間以上スマートフォン・インターネットを使うことがあり(仕事とはいえ)、少しブレーキをかけたいと思っているところです。

そうした中、GoogleやAppleは次のスマートフォン用OSから、ユーザーのスマホ利用時間を「ちょうどよく」使えるようにする機能を追加することを発表しています。

大手メーカーもユーザーのスマホ利用の現状を問題視し、対策に回るということです。
こうした動きを知り、しっかりと活用することで、私たちは幸せなデジタルライフをおくることができるようになります。

 

スマホは「依存」の罠がいっぱいだ!

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

人はなぜ、スマートフォン・ネット依存になるのでしょうか。
それは「その人の意思が弱いから」ではなく、アプリやWebサイトがユーザーが長時間触るように設計されているからです。

例えば、スマートフォンアプリの中でも大人気のジャンル、ソーシャルゲーム。
こうしたゲームで強くなるためには、コツコツと時間をかけてプレイしてゲーム内でのポイントを貯めるか、お金を払うか(課金)の二択となっています。
(なお、全国ランキングで上位に行くためには、「時間」と「お金」両方を投入する必要があります)

【関連記事】改めて考えたいスマホゲームの仕組みと中毒性  モバプリの知っ得![6]

 

ソーシャルゲームはユーザーの行動を解析することで依存性をより高めることができるのです。
例えばゲームの利用時間・課金タイミングなどを細かく分析し、それに合わせてゲームを作っていくことで「ユーザーはゲームを続けたくなる、お金を払いたくなる」展開になります。

大型連休・年末年始などの時間が作りやすい時期になると「ポイント集めて限定アイテムプレゼント」と銘打った、「通称:マラソンイベント」なるものが開催されます。
特定の期間中、寝る間も惜しんでゲームをやることで限定のアイテムがもらえる。
こうしてゲーム会社の戦略に巻き込まれ、ゲームに合わせて生活をするようになります。これは、立派な依存症ですね。

また動画サイトのYouTubeなどでは、視聴した動画から好みを分析し、「この動画もおすすめですよ」とレコメンドをしてきます。

最初こそ趣味嗜好とはずれた動画をお勧めしてきますが、動画を見続けることで趣味嗜好の情報がYouTube側に蓄積され、精度がどんどん上がってきます。

今後はAIなどがこうした解析をガンガン行い、私たちが依存する仕組みが機械的に作られていくでしょう。
依存性・中毒性の高いネットコンテンツという「薬物」を最新テクノロジーで作り、世界中にばらまくような恐怖がそこにはあります。

「スマホ依存、私には関係ない」と他人事でいても、あちら側からあの手この手で誘ってくるので、常に自分ごととして考える必要があるでしょう。

 

GoogleやAppleもついに対策を発表

こうした「スマホ依存」の現状に関して、ついにGoogleやAppleが動き出しました。

Googleは5月に開催した開発者向けイベント「Google I/O」にて発表した新しいAndroid OSの目玉機能として、スマホ依存対策を発表しました。
またAppleも、6月に開催した開発者向けイベント「WWDC」にて、時期iPhone用OSの目玉機能として、スマホ依存対策を発表しています。

両社とも細かい違いはあれど、依存対策に関する大まかな方向性は一致します。
基本となるのはダッシュボード機能。これはどのアプリを、どのぐらい使ったかをまとめて、自分のスマートフォンの利用状況を客観的に分析することができる機能です。スマホの使い方を把握することで、適切な距離を取る第一歩になるでしょう。

またスマートフォンの通知(お知らせ)も、依存の一因です。
定期的に画面が光って、通知が届くことで私たちはついスマホを触ってしまいます。
しかし両社の新しいバージョンではこうしたお知らせを大幅に制御する機能が登場しています。

またAndroidには、少しユニークなスマホ依存対策機能もつきます。
それは、画面の色が白黒になるモードです。例えば鮮やかな写真を楽しむInstagramや、カラフル映像を視聴する動画配信アプリも、白黒画面だと魅力が半減します。

本来このような制限をつける事は、企業の売り上げにとってはあまり良くありません。
AppleもGoogleも、利用者がたくさんのアプリを取りこみ、課金する。またウェブサイトや動画をいっぱい見て広告を見る。こうした回数が増えれば増えるほど売り上げが伸びます。

つまり、スマホ依存者を増やせば増やすほど儲かると言うことです。

しかし、この現状が招いた結果、スマホに疲れる人が続出し、社会問題化しつつあるのが今の状況です。

メーカーもこうした形で競争することの愚かさに気づき、適度な距離感で長く楽しんでもらおうとカジを切り出しました。

あとはそれを使う私たちの意識の問題になるでしょう。

スマホ依存対策機能が搭載されたiPhone、Androidの新OSは今年の秋以降に登場する予定です。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」6月10日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/