沖縄初のeスポーツチームのトレーニングとは。


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世界を目指し闘志を燃やす

浦添市のIT企業「株式会社ザ・ウェーブ」(住吉基伸社長)が運営する選手育成拠点「ザ・ウェーブ eスポーツトレーニングセンター」で、ガッツポーズを取るオキナワ・ザ・ウェーブ・ゲーミングの選手たち。(上段左から)「ぐれこ」さん、「お塩」さん、「もりもっち」さん、「ただの超暇人」さん、(下段左から)「ヤムッチャ」さん、「ほんじゅ」さん、「K-TA」さん、「まもる」さん=浦添市城間 写真・村山 望

コンピューター・ゲーム上で選手同士が対戦し、互いの腕を競い合う「eスポーツ」。欧米ではプロスポーツ化が進み、国内でも盛り上がりを見せつつある。沖縄でも、昨年はeスポーツ協会公認の大会が初開催されるなど、本格的なeスポーツの普及に向けた動きがあった。中でも、7月に県内初のeスポーツ専門チーム「OKINAWA THE WAVE gaming(オキナワ・ザ・ウェーブ・ゲーミング」が結成されたのは、県eスポーツ界にとっての大きな一歩だ。国内外大会への参戦に向け、日々腕を磨く選手たちに話を聞いた。

「格闘ゲームは、コミュニケーションとしていいツールなんです」

オキナワ・ザ・ウェーブゲーミングのチームキャプテンの「K–TA」こと長山啓太さん(35)はeスポーツの主要種目の一つである格闘ゲームについてこう語る。

「知らない対戦相手とでも、試合前に握手、試合後にも握手をする」。競技を通して交流の輪が広まったり、心が通じ合ったりするのは、他のスポーツ競技と同じだ。

コンピューター・ゲームについて、世の中では自分の中に閉じこもって行うものというイメージも根強いが、長山さんは「eスポーツの普及を通して、ゲームに対する悪いイメージを払拭したい」と力を込める。

長山さんは過去に、10年以上介護の仕事に携わってきた。その中で、ゲームが介護の現場に使われ、効果を上げた例を見てきたという。例えばゴルフゲームがクライアントの気力を回復させ、身体機能の改善につながったケースもあると話す。また、ゲームでの対戦を通して子どもが引きこもりから脱却した事例もあるといい、eスポーツには人と人とのコミュニケーションを開いていく力があることを強調する。

選手育成拠点も開設

子どもの頃からゲームが得意だった長山さん。介護職で働く傍ら、数年前からボランティアベースでeスポーツ大会の企画・運営を手掛け、一昨年にはうるま市の生涯学習センターゆらてくで100人以上が参加する大会を組織し、自らも選手として参戦した。

長山さんは選手としての腕前と大会組織の実績を買われ、意欲的にeスポーツ事業に取り組む浦添市のIT企業「株式会社ザ・ウェーブ」のeスポーツ部門GM(ジェネラル・マネージャー)・渋川浩史さんにスカウト。同社の社員となり、昨年7月のオキナワ・ザ・ウェーブ・ゲーミングの設立と同時に、チームキャプテンに就任した。

選手は現在13人。昨年4月、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開催された第1回「e–Sports Fes(琉球新報eスポーツフェス)」(主催・琉球新報社、特別協賛・日本トランスオーシャン航空)の入賞者を中心に、渋川GMと長山さんがスカウトした。「同大会では、入賞者がステージで選手名を読み上げられ表彰されたことが大いに刺激になったようだ」と渋川GM。チーム設立に合わせ、練習・試合のためのトレーニングセンターも開設した。

トレーニングセンターでは、スクリーンに対戦の様子を映し出せるほか、ネット配信のための機材もそろっている

ただし、同チームの選手たちの大部分は専業の選手ではない。キャプテンの長山さんも、日中はeスポーツの企画・運営の業務に取り組む。メンバーたちはそれぞれの仕事を終え、終業後にトレーニングセンターに集い、大会に向け腕を磨く。自宅でも練習は行うが、トレーニングセンターで他の選手のプレイを見たり、アドバイスをもらうことは勉強になるという。

努力こそ勝利の鍵

選手たちを駆り立てる原動力は、「強くなりたい」という思いだ。「ヤムッチャ」さん(30)は「格闘ゲームは努力を裏切らない。努力した分返ってくる」、「もりもっち」さん(36)は、「自分の実力がはっきり出るのがeスポーツの魅力。本気で取り組むつもり」と話し、「ただの超暇人」さん(25)は「大会で勝てたらうれしいし、負けたら悔しい。気持ちが盛り上がる」と闘志を燃やす。

トレーニングセンターでの練習風景。ひとたびコントローラーを握って対戦を始めると、選手たちの瞳は熟練の格闘家のように輝き始める

2月29日(土)には台湾から選手を招く国際大会「琉熱」(ザ・ウェーブ、琉球朝日放送共催)、4月には第2回「e–Sports Fes」の開催が予定されている。長山さんが掲げるチームの目標は「沖縄の選手を世界でトップクラスにすること」。大きな夢に向かって、選手たちは走り続ける。

(日平勝也)

(2020年2月20日付 週刊レキオ掲載)