<金口木舌>障がい者は「かわいそう」なのか


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「障がい者なんていなくなってしまえばいい」。神奈川県の障がい者施設で19人が犠牲になった事件。容疑者の言葉に背筋が凍った。施設で働いた経験がある人物による犯行だけに、理解できない

▼容疑者の言葉で思い出したのが、都知事を務めていた時の石原慎太郎さんの発言だ。在任中、障がい者施設を訪れ「ああいう人ってのは人格があるのかね」などと発言した。強く追及されることはなく、ましてや進退問題にもならなかった
▼胎児がダウン症などの疑いがあるかどうか、妊娠中に調べる出生前診断を受診した人で、染色体異常が確定した妊婦の9割が中絶を選択しているという。1年目に8千人弱だった受診者は、診断が始まり3年目となった昨年は年間約1万3千人となった
▼社会の風潮として「障がい者はかわいそう」「家族は苦労する」などの偏見は根深い。その証左が石原発言への追及の弱さであり、出生前診断の受診者の増加につながってはいないか
▼車いすを利用している友人が言った。「かわいそうな子はいない。『障がいがあってかわいそうだから、みんな優しくしましょう』。そんな言葉こそが惨めにし、つらくする」
▼ちょっとしたサポートがあれば前に進むことができる。しかしどうサポートしたらいいのか分からず、多くの人が戸惑っている。「かわいそう」の思い込みを、まずなくしていこう。