<金口木舌>共謀罪の本質


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 記者になって間もないころ、自治体に情報公開請求をすることになった。先輩記者から「〇〇等の案件について、と『等』を入れるのがポイントだ」と助言を受けた

▼「等」を入れると、対象の範囲が広がり、資料の質が高まり、量も増すのがその理由だった。「お役所用語」というのはそういうものなんだと妙に納得した覚えがある
▼国会で「共謀罪」の趣旨が盛り込まれた「テロ等準備罪」が審議されている。ここに出てくる「等」が気になって仕方ない。代表質問で山本太郎議員が「等」が示す犯罪の範囲をただした
▼安倍晋三首相は「一般の人が対象となることはあり得ない」と答弁した。「等」の中にさまざまな狙いが潜んではいないか。素直に「テロ準備罪」とすればいいのにと思うのだが、役所の用語に対するこだわりは強い
▼片や沖縄防衛局はオスプレイ墜落の第一報で、名護市に「墜落」と伝えていた。その後「不時着水」に修正した。言葉の言い換えで事故を矮小(わいしょう)化し、印象操作を図るのもお役所の手法か
▼警察は辺野古や高江での基地建設に反対する市民らを動画撮影している。運動のリーダーの山城博治さんが勾留されて3カ月以上たつ。政府は「テロ等準備罪」で「市民団体は対象外」とするが、「反政府組織」かどうか誰が判断するのか。すでに監視・人権侵害が起きている中、「等」への疑念が拭えない。