<金口木舌>残業時間の上限規制


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 チャプリンの映画「モダン・タイムス」の主人公は、ベルトコンベヤーの流れ作業で働く労働者。しかし工場の歯車として働くうちに、精神的にまいってしまう

▼1936年の映画だが、機械化にパソコン化が加わり、仕事の効率がさらに進む今にも通じる内容だ。精神疾患による労災申請は、2014年度に1456件と過去最多となった。労災支給決定は497件、そのうち未遂を含む自殺は99件だった
▼過労死の原因となる時間外労働を減らそうと、政府は残業時間の規制を検討している。しかし年間の残業の限度を月平均60時間、繁忙期は100時間で検討中というから看板倒れも甚だしい
▼オーストラリアでホームステイした日本の高校生が一番驚いたことは「父親が毎日午後6時ごろ帰宅すること」と話していた。考えてみれば、本来時間通り帰宅する日常が当たり前だ。残業ありきの日本の労働環境を改善しなければ、過労死はなくならない
▼「余暇を楽しむお金を得るため働いているのに、働き過ぎて遊べないなんて本末転倒だ」とは友人の弁。働く価値観は人それぞれだが、せめて趣味を楽しむ余裕は欲しい
▼今年はチャプリン没後40年。「モダン・タイムス」は81年前の今日、米国で公開された。映画の終幕は、恋人と手を取り合い歩く後ろ姿。「絶望の中にも笑顔を」のメッセージが心にしみる。