<金口木舌>しまくとぅばで論文を書けるか


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 受賞講演の演題は「なぜ、伊波普猷を批判するのか?」。伊波の思想形成を批判的に論じた伊佐眞一さんの「沖縄と日本(ヤマト)の間で」(琉球新報社刊)が伊波普猷賞を受賞、13日に贈呈式が行われた

▼「沖縄学の父」を批判することの意義を説く刺激的な内容に加えて、20分間、完全に首里くとぅばで語ったことが、参加者を驚かせた。ついていけない金口子をよそに、多くの人がうなずきながら聴いていた
▼1月に県立博物館・美術館で伊波を論じるシンポがあり、しまくとぅばのみで3時間にわたって議論した。登壇した伊佐さんはそこで「公の場で学術的なことをしまくとぅばで語ることができる」と自信を持ち、今回、実践した
▼講演を聴いた名桜大学の山里勝己学長は「これなら、しまくとぅばで論文も書けるはずだ」と感嘆した。米ハワイ大ではハワイ語の博士論文も認められている。「沖縄でもできるのでは」と言う
▼表記法が確立していてハワイ州の公用語であるハワイ語は、消滅危機言語でもある。そのため、熱心にハワイ語教育が取り組まれ、ハワイ語で学術論文が書かれるまでに30~40年かかったそうだ
▼しまくとぅばは島ごとに違い、表記法や学術用語の扱いなど多くのハードルがある。しかし、ハワイの経験に学べば、30年後に学術論文が書かれる時代が到来することも可能ではないか。