<金口木舌>沖縄子どもの貧困実態調査


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 事業に行き詰まり、経営していた会社が倒産した。その影響で持病のある息子の医療費が払えず、高校生の娘は修学旅行の参加を諦めた。子どもの貧困問題で取材した男性の話である

▼話を聞いて、いつ誰でも失業などの危機で貧困に陥る可能性があると実感した。だからこそ、行き詰まった時の受け皿が社会で必要とされる
▼県の子どもの貧困実態調査の報告書が2日、発表された。困窮世帯のうち、小学生の父親の約半数は正規雇用だった。「貧困世帯=非正規雇用」という図式は当てはまらない。調査では小学1年生がいる世帯で約37%、高校生がいる世帯で約32%が世帯年収300万円未満だったことも明らかになった
▼低賃金、長時間労働など雇用条件に課題があることを調査は示す。折しも売り手市場で人手不足といわれる。新規採用者だけでなく、現在働いている人の待遇改善を進めることも、ひいては子どもの貧困解消につながる
▼一方、一部の人から「昔の方がもっと経済的に苦しい子どもが多かった」「途上国の子たちに比べたら、まだいい方」といった声を時々聞く。果たしてそうなのか
▼部活よりもアルバイト優先という高校生や、修学旅行の不参加、進路選択の制限-。周りと比べて選択肢の少なさ、「諦め」がそこにある。しかし、未来は変えられる。それを差し示すのは、私たち大人の責任である。